国民に理性を取り戻させるのが、理想の指導者

 そのような北朝鮮の思惑が、私の妄想であってほしいが、もしそれが当たっているなら、現実にそのような方向に向かっているのは確かだ。

 要するに北朝鮮に対する国民の脅威が国民の判断を狂わせたり、あるいは政治家に対するモラルや国の無駄遣いへの国民の目を甘くさせたりしている。まさにテロに心理的支配を受けているとも言える状況だ。

 私の尊敬するハインツ・コフート(この人の理論の超簡単版解説書『自信がなくても幸せになれる心理学』(PHP研究所)を今月出したところだ)という精神分析学者は、組織が一見まとまりそうな2つのリーダーシップを紹介している。

 一つは、人々の野心を代わりに果たしてくれるカリスマ型リーダーだ。一般庶民の代わりに、アメリカや北朝鮮に強いことを言ってくれるリーダーはカリスマに映り、人々の人気を集める。

 もう一つは、人々の救世主になってくれるメシア型リーダーだ。安倍氏に頼っていれば景気を回復し、自分たちの生活を救ってくれると思ってもらえるなら、それはメシアに映っているということで、人々の人気を集める。

 ただ、コフートはそれを理想のリーダーとは考えていない。そういうリーダーがいると、人々が自分で考え、自力で問題を解決しようとしなくなるからだ。企業のトップがあまりにカリスマやメシアであると、一時的に企業はまとまるが、従業員が育たないのは容易に想像できるだろう。

 コフートに言わせると、人々に理性を取り戻させるのが理想のリーダーとされる。

 人間が不安な心理状態にあるとき、混乱を落ち着かせ、理性で考えさせてくれるリーダーは日本に現れるのだろうか?