テロの真の目的は殺人でなく国の弱体化

 テロという言葉の語源はフランス語の「terreur」で、「恐怖」というような意味だ。テロ事件が起こる際に、テロ組織からみて敵の人々を殺すことが目標と思われがちだが、語源的には、それによって恐怖を与えるほうに意味があると言える。

 テロリストが対象の国や組織の人間を殺すことは彼らの目標ではなく、さらなる目標のための犠牲者と私は考えている。その目標というのは、テロに対する感情的な反応によって相手国の経済を混乱させたり、誤った政策を採らせたり、さらに誤った指導者を選ばせたりすることで、相手国を弱体化させることなのだろう。

 米国の9.11テロのときも、全米に相当、感情的な反応が起こった。飛行機に乗る恐怖もさることながら、政府のほうも過剰ともいえる荷物検査を行った。そのために、国内路線で飛行機に乗ることが手間となり(私の記憶では、荷物検査を終えて、出発のターミナルに着くのに2時間もかかることがざらだった)、自動車で移動する人が増え、飛行機に乗る人が激減した。そして、航空会社の破たんが相次いだ。米国を代表するユナイテッド航空や国内便の大手USエアウェイズを含め、何社もの航空会社が破たんに追い込まれた。これも相まって、米国への観光客も減っている。

 政治的には、テロ組織の温床とされたアフガニスタンの攻撃に踏み切り、さらにテロの支援をしたことを疑われて、イラク戦争にまでつながったわけだが、大勝利にもかかわらず、結果は思わしいものではなかった。大量破壊兵器は発見できず、米国への信頼は失墜したし、かつての中東での戦争と違って、石油の利権を得ることもできなかった。

 駐留した米兵はゲリラ的なテロに悩まされ、戦後のほうが死者を多く出すことになり、結局は撤兵する羽目になった。それ以上にイラクやその周辺の政治的な混乱が続き、イスラム国ができる土壌を作ったともいわれる。また、この地域の反米感情はかつてないほど高まっているとされ、米国に対してイエスマンのような立場にあったサウジアラビアもかなり離反してきている。

 5000人もの米国人を殺すことより、恐怖によって政治判断を狂わせ、米国経済を弱体化させ、米国に対する反感を持つ人を増やすことが目標だったのではないかと私には思えてならないのだ。つまり、そこで起こる恐怖より、恐怖によって人を狂わせ、自滅や弱体化につなげていくから「テロリズム」なのではないかと。