5月の初めは、新聞の国際面を見るとまさに選挙ウィークという感じであったが、フランスではエマニュエル・マクロン氏が、韓国ではムン・ジェイン(文在寅)氏が、ともに圧勝と言っていい形で当選した。

フランスの大統領に5月14日に就任した、経済通とされるエマニュエル・マクロン氏。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

戦争より経済を冷静に重視したフランス、韓国

 これはおおむね事前の予測通りの結果だったわけだが、それが逆にニュースになった。フランスでは4月20日にパリで警官襲撃テロが起こり、トランプ氏は即座に「パリでまたテロが起こった。フランスの人々はもう耐えられない。これは大統領選に大きく影響する!」とツイートした。これがトランプ氏の予測のように選挙に影響し、極右とされるルペン氏に有利に働くという憶測もあったのだが、ほとんどその影響はなかったといっていいような選挙結果だった。

 韓国にしても、北朝鮮が米中の警告を無視して核開発を放棄しようとせず、4月にミサイル発射を繰り返したことで、大統領選への影響が懸念された。ムン・ジェイン氏が北朝鮮とは融和政策を行う考えの持ち主だからだ。実際、4月の第2週には安 哲秀(アン・チョルス)氏が猛追し、韓国ギャラップの世論調査では3ポイント差まで追い上げられたが、その後にムン氏は支持を伸ばし続け、結局はダブルスコアでの圧勝となった。

 両国における新大統領の当選理由をみると、フランスではルペン氏が当選したらEUの離脱、経済の失速につながりそうだが、経済通のマクロン氏なら政治歴は短いが経済の立て直しが期待できるということだった。また韓国では、格差問題の解消に近づけるとか、金権政治による腐敗体質を一掃できるだろうという期待から、ムン氏を選んだのだろう。

 前回のコラムで、現状維持バイアスや同調心理が選挙に及ぼす影響を論じたが、人間が感情的に反応するのは、それ以上に危機に対する不安である。歴史を鑑みても、そういう不安が高まった時に、独裁者が現れたり、戦争を始めるような支配者が選ばれたりする。そういう点では、フランス人や韓国人の冷静と言える対応に敬意を払いたい。