そして、この診断基準では、当てはまる項目が多いほど重症とされるのだが合計6項目当てはまるということなら、重度と診断されることになる。(2、3個で軽度、4、5個で中等度)。

本人も周囲も病気とみなさない

 これだけ典型的かつ重症のアルコール依存症であっても、本人はアルコール依存症であることについて否定的なコメントを述べているし、テレビのコメンテーターにしても、あるいはこの事件について取り上げるワイドショーの放送作家やディレクターにしても、これを依存症という病気であるという文脈で語ることはほとんどない。

 もちろん、一部の識者がアルコール依存症であるというコメントや診断を下しているが、残念なのはそれで終わっていることだ。

 早期発見・早期治療が原則とされる(だから前述の2項目が当てはまっただけでアルコール依存症という診断名が与えられ、治療が推奨されるのだ)依存症を含む心の病において大切なのは啓蒙だ。

 実際、日本では自殺者が2011年まで14年続けて3万人を超えていた。その多くがうつ病絡みということで、厚生労働省が音頭をとって「お父さん、ちゃんと眠れている?」をキャッチフレーズに早期発見のための啓蒙活動などに取り組んだところ、自殺者が年1万人以上減ったという実績がある。

 アルコール依存も自殺につながることの多い病気だ。自殺者の23%がアルコール依存症だという推計がある。年間5000人程度の命を奪っているのだ。

 それを考えると、今回の事件はアルコール依存に対する理解を深めるよい機会だった。「どういう病気で、どのような症状が2つ以上生じたら、医者に診てもらった方がよいのか」「山口氏のような現役の大スターも蝕むし、人格を破壊することがある」などということを広めるチャンスだったのに、それを行おうとしないテレビマスコミの社会性のなさ(社会性があるから電波使用料がものすごく安く設定され、放送の免許を与えられているというのに)には唖然とするしかない。