減税より増税、経費の拡大で不景気解消

 だから、昇給はすぐに消費に結びつかないが、減給はたちどころに財布のひもを締めさせるのはそういうメカニズムが働いているのだろう。これまでの長期不況で給料が下がり続けた時代の消費マインドを、少々のベースアップで変えることは困難だということになる。安倍首相が企業に昇給を求めても、企業は利益が減らない程度にしか昇給しないのでは、消費も増えないし、物価も上がらない。というか、不景気はちょっと給料が下がっただけで簡単に生じるが、景気を良くするのは難しいということになる。

 このような心理特性(特に実験などで明らかになった心理特性)を知る心理学者を利用すれば、経済学者が考えるのとは別のソリューションが考えられるだろう。

 私が、この理論を読んで考えたことは、減税には経済学者が考えるより景気浮揚効果がなさそうだということだ。

 要するに減税で得をした喜びは想像されるほど大きなものではないので、それが消費には結び付きにくいということだ。心理学の実験を見る限り、アメリカ人でさえ、得にあまり反応しないのだから、もっと貯蓄傾向の強い日本人は、減税が消費より貯蓄につながってしまうことは大いに予想できる。

 逆に増税というのは、損を恐れる効果を活性化させることになる。例えば、消費税の増税が決まると、その前にかけこみ需要がかなり生じるのは、上がった後でものを買って損をしたくないからだろう。ただし、この場合は、消費税を上げた後の、「損だから買わない」という反動が大きく出てしまう。

 例えば、直接税を上げて、経費を認めるというのはどうだろうか?

 この場合は、税金を持っていかれるのは損という心理が働きやすいので、もっと経費を使うようになる効果が期待できる。実際、法人税や所得税が高かったころのほうが、中小企業や自営業者たちは、税金を払いたくない心理から接待費で豪遊していたり、高級車を買ったりする人が多かった。

 所得税を増税する代わりに、サラリーマンにも洋服代どころか食費も働くための経費として認めたら、消費が活性化するかもしれない。政府のホストコンピューターにつながったレジから出たレシートは全部経費として認めるなどということができれば、そんなに実用化は困難でないし、レジの機械の会社も儲かるし、さらにいうと、商店からは売り上げの捕捉がしやすくなり、税逃れも防げる。