心にいい、頭の良くなる考え方を身に着ける

 「不適応思考を改めよ」と言っても、染みついてしまったものはなかなか難しい。そこで私が提唱しているのが、代わりの思考パターンを身に着けろというものである。

 例えば、「かくあるべし」思考が強い人が、「少し人に頼っていい」とか、「翌日に持ち越せるものは持ち越していい」と言われても、なかなかすんなりとは受け入れられない。要するに自分の考える「正解」が正しいと思い過ぎて、相手の言う「正解」が受け入れられないのだ。その際に、「頼ってはいけない」→「頼っていい」といきなり考えを変えるのではなく、「頼っていいかもしれない」と一つクッションを置いてみる。「頼っていい」なら「そうはいかない」となってしまいかねないが、「頼っていい可能性もあるよね」と言われれば「その可能性はゼロ」とは言いにくいだろう。

 いろいろなことに「かくあるべし」と答えを決めつけるのでなく、「その可能性もある」「そうかもしれない」とほかの可能性も考えることはメンタルヘルスに良いだけでなく、判断が妥当なものとなりやすいはずだ。

 答えが一つと思っている人は無用なあつれきを生じやすく、しかもその答えが後で違っていたと分かった時に精神的なダメージを受けやすい。南京大虐殺があったかなかったかとか、メタボは体に悪いとかそういうことに正解を求めても、将来、新しい説が出てきて、常識が変わる可能性もある。様々な異論を読んだ際に、「それもあり」と素直に受け入れられるほうが柔軟だろうし、将来も慌てるリスクが小さくなるだろう。

 過去事例や、経験、あるいは、既存の知識から、新しい企画や発案が受け入れられない人もいる。しかし、このままでは業績は悪化の一途ということであれば、自分のサバイバルにかかわってくるだろう。こういう際に、「やってみなければ分からない」と思えるかどうかで局面は変わる。現実に、現在ほとんどの国で、生産が過剰で消費が不足しているという、人類がおよそ経験したことのない事態に直面している。生産性を上げることが至上課題だったのに、それをするともっと豊作貧乏のようになりかねない。いろいろなアイデアを一笑に付すより、「やってみなければ分からない」という発想を身に着けたい。

 「完全主義」というのもメンタルヘルスに悪い。これに二分割思考がくっつくと、100点でなければ全部不合格ということになるから、99点でも満足できない、どころか、落ち込みの原因になる。各々の事項で、このくらいできたら合格というラインを設定し、それをクリアできればいいと思えればメンタル的にも楽になれるし、何より仕事が速くなる。

 このように現代に適応した思考パターンを身に着けることができれば、メンタルヘルスを害するリスクも低減できるし、より時代や状況の変化に対応しやすいだろう。

 精神科医の立場から、よりメンタルヘルスに良く、現代に適応的な思考パターンを提示するために『「こうあるべき」をやめなさい』(大和書房)という本を書いた。参考にしていただけると幸いである。



本格的に暖かくなり春も本格化、新年度の始まりです。この4月も、多くの学生が新入社員として羽ばたきます。大きな夢を抱きながら社会人としてスタートする一方で、同じぐらいに大きな不安を持っているはずです。そのような不安を少しでも解消すべく、NBOのコラムニストの皆様に、メッセージをいただきました。新入社員時代はどのようなアドバイスが身に染みたのか、そしてどのような心構えを持っているべきなのか――先輩の言葉をまとめました。

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