不適応思考を知り、修正するというメンタルヘルス法

 この認知療法の良いところは、うつの治療としてだけでなく、予防として使えることだ。さらにいいのは、本を読んだりワークブックを使うことで、医者や専門家に頼らなくてもセルフヘルプが可能なことである。

 要するに自分の不適応な思考パターンに気付き、これを修正していければ、うつ病になりにくくなるし、うつになった際も重症化しにくい。

 ベックの弟子にあたるフリーマンという認知療法家は12個の不適応思考を挙げている。

 前述の物事を白か黒か、敵か味方か、正義の味方が悪人かという二分割で考える二分割思考はその代表例である。こういう際に、味方でも批判をすることがある(完全な味方などいない)とか、白と黒の間にグレーを想定し、この人は8割は味方だが2割は敵のところもあるというふうに考えられれば、柔軟な判断ができ、また味方が批判しても必要以上に落ち込むことはなくなる。

 そのほか、相手の心を勝手に決めつける「読心」、将来を勝手に決めつける「占い」、相手のいい側面や悪い側面を見ると、その人が全部いい人に見えたり、全部悪い人に思えたりする「過度な一般化」など、テレビの論調を観ていると、よくある思考パターンが不適応思考に数えられている。

 その中で、認知療法の世界だけでなく、森田療法の世界でも心に悪い思考パターンだと考えられているのが、「かくあるべしshould思考」である。

 新入社員や、まだ慣れない職場で、「任された以上一人でやり遂げないといけない」「納期は絶対に守らないといけない」などと考えていると、人に頼ることができなかったり、延々と残業をしてメンタルヘルスを害してしまう。

 こういう思考パターンが強いと気付いたら、「素直に人に頼っていいんだ」「慣れないうちは素直に、『できません、どうすればいいんでしょう?』と泣きついてもいいんだ」と思えるだろう。そういうふうに思考パターンを変えていくことができれば、必要以上に落ち込むこともなくなるはずだ。

 こんなことをすれば嫌われると決めつけて、そうすることを避けたり、発言をする前から相手の反応を決めつけるのも「読心」という不適応思考に当たる。

 自分の思考グセを知ってまずいものを治すというのは、新入社員や異動の後でなくても、将来にわたって使える心の健康法なのである。