勝ち組が「徳」を見せないと恥ずかしい社会に

 日本人の一般大衆の犯罪の少なさや親に対する介護の義務感などを見る限り、「道」は世界的にみても誇れるものがある。問題は、勝ち組や富裕層が大衆に、寄付や高額納税などの「徳」を示さないことだろう。

 報道を見る限り、森友学園の理事長が「人格を磨き、さらに進んで、社会公共のために貢献」しているとは思えないし、また下村元大臣を含めて、お金にまつわって汚い印象を与えること自体が、「徳」の教育に反している。経営者にしても、例えば東芝の歴代経営者や震災前の東京電力の経営者の徳のなさが、会社の存亡につながったと言っていいはずだ。

 勝ち組が「徳」を見せないと恥ずかしいという価値観(日本にもかつてはあったと私は信じている)を再建しないと、子どもたちに示すべきロールモデルは作れないし、日本の格差社会や消費不況(金持ちが貯めるだけでなくもっと使ってほしい)の問題が解決しそうにないというのは私の杞憂だろうか? 日本に必要な道徳教育というのは、過去の偉人など、どういう人間が徳があるかを教えていくことや、この手の恥ずかしい人間を断罪して、こんな人間になってはいけないと教えることのように思えてならない。

 「道」がしっかりしていれば犯罪も少ないし、ある程度の秩序は維持できるだろう。しかし、経営者や為政者の「徳」がないと、社会の方向は定まらないし、人々の不安は治まらない。それが現在の日本の停滞につながっているというのが私の心理学的解釈である。

 もちろん、「徳」は為政者や経営者にだけ求められるものではない。「情けは人のためならず」と言う。せめて本コラムの読者の方だけでも、少しでも上に立つ立場にいるなら「徳」を示すということを意識してもらえれば、そのセクションの士気は高まるし、先々、自分が歳をとってから慕われるという形で返ってくると私は信じている。

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