北朝鮮が正常化するシナリオのリスクは?

 ただ、北朝鮮、あるいは金正恩の急激な軟化を見る限り、北朝鮮が核の放棄も含めて、かなりの妥協をして、制裁解除や米朝国交正常化にこぎつける可能性だってなくはない。

 これについての準備については、私の見るところ皆無に近い。

 もちろん、これによって、拉致問題が解決するなど、日本にとってもハッピーなことが生じるかもしれない。

 アメリカが北朝鮮も普通の国と見なしたとたんに、北朝鮮が日本にいろいろな要求をしてくる可能性だってある。韓国が従軍慰安婦問題を言い続けるように、北だって、それを言い回してアメリカで被害者面をするかもしれない。韓国と違って、戦時賠償が済んでいないので、それを要求してきて、国家の立て直しに使おうとするかもしれない。アメリカに圧力をかけられれば、それを飲まざるを得ないことだってあり得るだろう。

 中国通の外交評論家の冨坂聡氏によると、中国は核を持つことで自国の安全が保障されてから、経済発展優先の政治に一気に舵を切ったそうだ。

 北朝鮮が中国のまねをして、急激に経済優先路線に舵を切る可能性もなくはない。

 そうなった際に、アメリカや中国、韓国などは真っ先に北朝鮮を利用するのではないかというのが私の懸念だ。

 北朝鮮の賃金水準は日本の100分の1とも1000分の1ともいわれている。そのときに、フォードやGM、サムソン、GAPなどが北朝鮮に工場を作って、日本に売り浴びせてきたら、昔のようにアジア製を安物と思わず、安いものを喜んで買うようになった日本国民が飛びつく可能性だってある。

 以前、ソ連の崩壊を予想した小室直樹氏が指摘していたことだが、ソ連がなくなってからアメリカは資本主義の世界では日本の敵になるのだから、軍事同盟を結んでいても経済の上では日本の困るようなことはいくらでもしてくる可能性はあるのだ。

 かつてベトナムが経済優先路線に舵を切った際に、日本は、社会主義国への警戒なのかアメリカへの忖度なのかは知らないが、ベトナムへの経済進出が大幅に出遅れた過去を持つ。もちろん、アメリカは旧宗主国のフランスと並んでベトナムに投資していた。

 ベトナムは東南アジアで最も勤勉な国民性だとされているのに、近隣のタイなどの10分の1くらいの人件費だったから、圧倒的にコストパフォーマンスが良かった。北朝鮮の人たちも飢えが脳の発達に悪影響を与えているかもしれないし、世界基準の良質な教育を受けていない可能性もあるが、もともとの民族性を考えるとベトナム以上の優秀な労働力になるかもしれない。

 それをかつてのベトナムの時のようなバイアスで上手に利用できないとすれば、日本のサバイバルに大きな影響を与えるだろう。

 北朝鮮がまともな国になる可能性がゼロでなくなった以上、そのときの準備も必要だと思えてならない。

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