スポーツで勝っても学問で勝てなくなった日本

 2018年1月に発表された幼児や小学生対象の調査で、「大人になったらなりたい職業」の1位が男子では15年ぶりに「学者」になったそうだ。ノーベル賞受賞が相次いだ影響ということだが、日本の子供たちの理科離れや学力低下を考えると、本当に喜ばしいことだと私は考えている。

 ただ、学問をできる人を表彰するノーベル賞と、オリンピックでは大きな相違点がある。それは、オリンピックは現役の優秀選手を表彰するが、ノーベル賞は20年位前の過去の研究に対して与えられるケースが多いということだ。

 日本人の多くは、日本はノーベル賞をたくさん取っているが、中国や韓国はろくに取っていないとして、日本の科学技術の高さを論じるようだが、それは20年位前は勝っていたということに他ならない。

 政府が公表している最新の科学技術白書でも、研究価値が高いとされる被引用件数の多い論文の国別順位で、日本は10位にまで下がっている。アメリカがトップで世界の4割を占めるが、2位になった中国がものすごい勢いで伸びている。

 日本は、1980年代までは、例えば中学生の数学力は世界一だった。だからその20年後、30年後までは研究者の学力も高かったのだろう。実際、2002-2004年の段階では、論文引用数の順位はアメリカ、イギリス、ドイツに次いで4位だった。

 今後の国の競争力を考えると、トップレベルの学者の学力は高いに越したことはないが、その人たちへのインセンティブがあまりに乏しい。学者に対する報酬も研究費も先進諸外国や中国と比べてかなり少ない。その上、できる人間を賛美する風潮がほとんどない。

 これでは、もともと勉強が大好きという人を除けば、世界に勝とうという気になかなかなれないだろう。