スーパーチューズデーの対象州から米国攻略を

 日本は軍隊が自衛隊になる過程で、陸軍中野学校の残党を雇うことはなかったが、総合商社に入り込んだ人は多かったそうだ。そういう人たちは、まずその国で親日感情を醸成してから日本製品を売る。だから、現地ビジネスがうまくいった、という話を聞いたことがある。確かに私が知る範囲でも、商社が進出している国では親日感情が強い。

 少なくともルーツを見る限り、日本人は決して情報操作が下手な国ではないのだから、自信を持ち、もっとその能力を生かすべきだろう。日本外交にしても、共産主義の崩壊後は、ロシアも含めて、選挙で首脳を選ぶ(中国でさえ人気がないと次のトップになれないという)のだから、親日感情の醸成は外交上大きなアドバンスを生む。

 トランプはラストベルトを制することで大統領選を制したわけだが、選挙の大勢を決めると言われるスーパーチューズデーに選挙が行われる諸州の人口は決して多くない、私もカンザスという田舎の州に留学していたが、当時の人口は200万人ちょっとだった。そういう州では日本が工場進出をするだけで一気に親日的になる。

 日本企業は今は東海岸や西海岸に進出することが多いが、それをこれらの州に移せば日本の影響力ははるかに増すだろう。トヨタ自動車にせよ、カリフォルニアからテキサスに拠点を移すようだが、もっと人口が少なくてスーパーチューズデーの対象の州に移れば、その周りに部品メーカーも進出してくることも含めて、確実に親日州ができたはずだ。

 単に首相が外遊して金をばらまくより、宣伝活動であれ、工場進出であれ、どうすればその国を親日的にできるかを考えるほうがコストパフォーマンスがいいだろう。

 もちろん、ビジネスマンのサバイバルにとっても、これはヒントになる。要するに交渉事を成功させたり、自分のアイデアを通すためには、根回しが大切だし、それ以上に社内世論(相手の会社も含め)を喚起できたり、自分のギャラリーを味方につけることができれば圧倒的に有利だ。

 情報操作はいけないことではなく、人間が心理学的な生き物である以上、いいイメージを植え付けたほうが交渉事はうまくいくことを知っておいて損はない。心理学の研究でも、第一印象が相手の判断に大きな影響を与えることは明らかにされている。

 交渉術を磨くことも、企画をよりよいものにすることも大切だが、相手も心理的な生き物だということを肝に銘じて、別の角度の準備を忘れないようにしたいものだ。