戦前の日本は自国宣伝が巧みだった

 歴史をひもとくと、日本はけっして自国PRの下手な国ではなく、戦前はむしろ最先端の自国宣伝国家だったという見方もある。戦前の陸軍中野学校出身のスパイというのは、情報を取るという標準的な活動だけでなく、当時はまだ珍しい情報操作までもできた優秀なスパイ集団だったという。イギリスやフランスの占領政策に不満を持つ東南アジア諸国の大衆にあの手この手で情報操作を行い、日本軍が攻めてくると大衆が歓迎し、それによってシンガポールまでをあっという間に落としたというのだ。

 ついでに言うと、当時は、映画も現地大衆を親日派にするための道具に使われた。甘粕事件で大杉栄らを殺害した甘粕正彦はのちに満州にわたり、特殊部隊で諜報活動を覚えた後、満州映画協会(満映)の理事長になる。李香蘭を看板スターとし、満州人を親日的にしていくことに一役買った。

 戦争に負けてからは、陸軍中野学校の出身者の活躍は別のところに引き継がれる。米国は諸外国を親米的にするために陸軍中野学校のノウハウを参考にしたとされるし、韓国や北朝鮮ではそのまま軍隊のエリートとして残った。彼らは恐らく、日本でかなりの情報操作を行ったのではないだろうか。北朝鮮の情報機関の人間は、当時の日本のマスコミに取り入り、在日朝鮮人に帰国を促す目的ではあったものの、日本人にも北朝鮮が「地上の楽園」であるというイメージを植え付けた。

 韓国でも、反北朝鮮の世論形成に情報機関が関わっているだろう。例えば、大韓航空機撃墜事件の自作自演説というものがある。確かにひどい事件だが、乗客はほとんどが出稼ぎ労働者であり韓国の要人が乗っていなかったこと。自殺した実行犯が、わざわざ日本で一度捕まって足がつきそうな人だったこと。金賢姫がすぐに特赦され、むしろ厚遇されていることなど、確かに謎が多い。当時は、ソウルオリンピックの競技の一部を北朝鮮で開催しようとする機運があったが、この事件でそれはなくなった。私はやはり韓国の情報操作を疑うが、そう考えるのは北朝鮮による情報操作の影響かもしれない。