偏った考え方による「うつ」を予防する認知療法が主流

 この20年くらい、最もトレンディになった心の治療法に「認知療法」がある(日本でも2010年から医療保険の対象になった)。人の認知パターンを思考の偏りが生じないように変えていくことで、うつ病や不安障害の治療や予防を行う。そのなかで、最も矯正すべきとされているのが、前述した善悪二元論のような「二分割思考」など、“認知のゆがみ”と言われるものだ。

 例えば、将来について「もう今後はいいことなんかない」と決めつけている患者がいたら、「いいことはないかもしれないが、それなりに人との出会いがあるとか、一人くらいは理解者が見つかるなど、悪いことばかりではない可能性もゼロではない」ということを納得させて、将来の決めつけ(認知療法では「占い」と呼ばれる)を矯正していく。これによって、絶望から自殺に至る最悪のパターンを避けられるし、抑鬱(うつ)的な気分が改善していく。あるいは、このような思考パターンの矯正を自力で行えるようになれば、何かで失敗したり、あるいは失恋やリストラを経験しても、「もうダメだ」と将来を悲観的に決めつけるリスクが低減する。それがうつ病の予防になるのだ。

 このように人間の認知パターンを変えていくという治療法は、数多くある心の治療法のなかでも、大規模な統計調査で有効と検証された(エビデンスのある)数少ない治療法と認められている。ついでに言うと、メンタルヘルスだけでなく、人間の判断力をより妥当なものにするためにも役立つはずだ。

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