試合中継手段の多様化を追い風に

 パ・リーグの球団にとっては、BSとCSの放送がお茶の間に浸透したことも大きかったでしょう。かっては、人々がテレビを見るチャンネルは地上波とNHK BSくらいで、パ・リーグ球団の試合の映像はニュース番組で見るのがほとんどでした。そこにBSとCSが加わり、ファンは、その気になれば、プロ野球全試合の視聴ができるようになりました。さらに近年は、ネット放送にもプロ野球を中継するチャンネルが広がり、視聴手段はさらに多様化しています。

 ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン氏は、1997年に提唱した有名な経営理論「イノベーションのジレンマ」において、本物の変化は辺境から始まると指摘しています。つまり、既存の事業や産業に対する破壊的なイノベーションは、捨てるものがない、守るものがないベンチャー企業や、誰にも侵されることのない辺境や周辺の企業から生じるのだと。

 日本のプロ野球においても、この10年の地域密着革命にパ・リーグ球団が火をつけたのは必然だったかもしれません。そして、プロ野球界にとって明るい材料は、巨人戦の全国生中継という鉄板の商品を持っていたがゆえの「イノベーションのジレンマ」に陥っていたセ・リーグ各球団も、来場客を中心に据えたビジネスに本格的に取り組み、成果が出てきていることでしょう。

 かようにして球団改革が進んだことで、プロ野球ビジネスは良い方向に向かっていることは間違いありませんが、これで安泰というわけではありません。日本のスター選手が移籍を目指すMLBや他のレジャー産業に今後どう対抗していくかという観点からは、球界全体としてのビジョンが、まだ混沌として見えてきていません。プロ野球は、余暇産業のひとつとして、あらゆる娯楽と、忙しい現代人のカネと時間を巡ってのバトルロイヤルのリングに立たされているのです。

 スマートフォン、漫画、ごろ寝、映画……これらはライバルにもなりますが、アライアンスを組むことで、魅力を高め合う仲間にもなり得ます。市場も日本に留まらず、スマホでの視聴を想定し、世界の津々浦々まで広げられる可能性が生まれています。そんな77億人(編集部注:国連の推計では2020年に世界の人口は77億人に達する)の余暇の争奪戦において、球界としての経営戦略が見えてきたとき、野球界の未来はより明るいものになると思います。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「近鉄バッファローズ」としていましたが、「近鉄バファローズ」の間違いでした。また、「ZOZOマリンフィールド」も「ZOZOマリンスタジアム」の間違いでした。本文は修正済みです [2017/07/13 16:40]

記事掲載当初、「プロ野球12球団の2015年の経営状況」の表で千葉ロッテマリーンズの純利益を-456億円としていましたが、-456万円の誤りでした。お詫びして訂正いたします。表は修正済みです [2017/07/14 14:45]