球界再編を経てパ・リーグから地域密着経営の原点回帰

 パ・リーグがこうした長きにわたる人気低迷の状況から一変し、前述したように経営の改善傾向が続くようになったのはどうしてでしょうか? それは、地域密着というスポーツ興行の原点に、各球団が帰ったからです。球界再編という、いわば落ちるところまで落ちた結果かもしれませんが、現実問題として、巨人戦の全国生中継という飛び道具がほぼ消滅しました。こうしたなか、一人でも多くのお客さんにおカネを払って球場に足を運んでもらい、満足していただくだけのサービスを提供し、また来てもらうという、客商売の原点に帰り、地域のエコシステムに割って入ることに活路を見出したのです。

 地域密着路線は、日本においては1993年に誕生したサッカーJリーグが火付け役でしたが、スポーツ興行の基本中の基本です。スポーツ興行をビッグ・ビジネスにステップアップさせるにはマス媒体で試合を中継することが必須ですが、それはスタジアムの熱気あふれる興奮をより多くの人に伝えようという営みであり、まずはスタジアムを満員にすることが前提なのです。そして来場者の大半は地元客です。ゆえに、まずは地元でしっかりチケットを売ることがスポーツ興行の第一歩なのです。そこに各球団は改めて気が付いた。

 そんなの当たり前だというなかれ。どんな経営でもそうですが、意外と初心・原点は忘れがちなのです。ましてやプロ野球の場合、セパの圧倒的な格差という事情がありました。巨人は全試合、そして他のセ・リーグ球団は巨人戦が全国津々浦々へテレビ中継され、それを国民の5人に1人が見ていた。そのテレビ露出が人々をさらに球場へ誘引する、拡大再生産の循環ができ上がっていました。

 こんな圧倒的な空中戦が派手に展開されているかたわらで、「テレビじゃ見れない川崎劇場」に象徴されるゲリラ的なマーケティング手法と、商店街を回り、ちらしを配り、ポスターを張って球場への集客作業を行う……。まるで竹槍でB29を撃墜しようとしているような虚しさを、当時のパ・リーグ球団のビジネス担当者は感じていました。「そんな面倒な作業をしたって何になるんだ、とにかく電波だ、電波にさえ乗せればすべてがうまくいく」……わけがないのは、先に記したとおり。「満員のスタジアム→マス媒体のコンテンツ」であって、逆にはならないのです。

 そんな無力感と閑古鳥の苦難の時代を経て、ホークスが親会社の経営危機を契機に始めた原点回帰、つまり地域密着路線がまず軌道に乗りました。それが北海道に受け継がれ、そして球界再編を経て、楽天やロッテなどパ・リーグ球団を中心に浸透していき、近年はセリーグ球団にもその意識が広がっているという次第です。