プロ野球セパ交流戦はもつれはしたものの、終わってみれば今年もパ・リーグの勝利という結果になりました。これで2005年に導入されてから13回中12回、パ・リーグの勝ち越し。通算でもパ981勝、セ872勝と圧倒的で、身も蓋もない言い方をすれば、要するにセパの間に実力差があるということです。(セパの競技力の差異に関する私の分析については、こちらの記事をご参照下さい)

地域密着経営でセ・リーグ人気球団に匹敵する観客数を動員する、福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡 ヤフオク!ドーム」(写真:東阪航空サービス/アフロ)
地域密着経営でセ・リーグ人気球団に匹敵する観客数を動員する、福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡 ヤフオク!ドーム」(写真:東阪航空サービス/アフロ)

球界再編を経てパ・リーグの人気、経営が改善

 昔から「人気のセ、実力のパ」と言われていましたが、近年ではパ・リーグ球団の人気も高まってきています。現在のセパの経営状況は、「会社四季報業界地図2017年版」(東洋経済新報社)によれば、観客動員で20%ほどセ・リーグが上回っているものの、売上高はほとんど差がない。この金額は推定値ですが、プロ野球球団の経営実務に携わってきた私から見ても、さほど違和感のない数値です。ほぼ実態を反映した数字でしょう。こんな拮抗した状況は、わたしが千葉ロッテマリーンズの選手だった1990年代前半はもちろんのこと、球界再編に揺れた2004年の時点でも、とても考えられないことでした。

プロ野球12球団の2015年の経営状況
プロ野球12球団の2015年の経営状況
出典:「会社四季報業界地図2017年版」(東洋経済新報社)
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 球界再編は、パ・リーグの近鉄バファローズが年間40億円とも言われる赤字を抱えるなかで、オリックスとの合併によって状況を打開しようとしたことに端を発したものでした。事が起きたのはパ・リーグでしたが、その背景にあったのは、巨人戦の視聴率が年々下がっており、プロ野球の前途が暗たんとしていたことでした。今では遠い昔話のように聞こえるかもしれませんが、当時の大多数のカジュアル・ファンにとってはプロ野球イコール巨人戦であり、巨人戦はほぼ全試合、地上波放送で全国生中継されていました。

 巨人のコンテンツ力がどれだけ凄かったかって、その平均視聴率は1980年代は軒並み30%を超え、1990年代に入っても、若干の下落傾向は見えつつも、平均20%前後を保っていました。これが、21世紀に入ると右肩下がりの傾向が明確になり、球界再編の頃になると10%を割り込む日も多くなり、いよいよ地上波全国生中継の継続が危ぶまれるようになっていったのです。

 太陽系から太陽が失われるような危機感のなか、球団経営者サイドはさらにもう一つの合併も含めた球界再編による状況打開を主張していましたが、12球団の温存を主張する選手会が対峙し、球界初のストライキも行われました。その後は、楽天の新規参入、産業再生機構入りしたダイエーがホークスをソフトバンクに売却と、疾風怒濤のごとく事は流れ、2005年から再出発となった次第です。

 セパ交流戦が始まったのも、この年からでした。長年、導入を主張してきたパ・リーグに対して、セ・リーグは、「巨人戦を失うセ・リーグから、巨人戦を得るパ・リーグへの利益移転につながるため、承服できない」として反対の立場でした。しかしこのときばかりは、パ・リーグ球団から次なる経営危機が出ることによるダメージはそれ以上に大きいという考えでまとまり、(選手会が導入を突き付けたからでもありますが)異なるリーグの各6チームとそれぞれ6試合、計36試合ずつのカタチで発進したのです(現在は各3試合、計18試合)。

 その後、巨人戦の地上波全国生中継がほぼ消滅するという、球界関係者がずっと恐れていたことが現実のものとなったにも関わらず、毎年のようにプロ野球全体での観客動員数は史上最高を更新し続けています。前述のパ762億円、セ797億円、合計1559億円の売上高も、史上最高値といっていいでしょう。特筆すべきはパ・リーグの成長で、球界再編の頃は私の推定で、パ400億円、セ800億円、計1200億円でしたが、パは10年余りの間にほぼ2倍に売上高を伸ばしたことになります。

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