年俸開示の適正化で日本野球の魅力を高めよう

 それにつけても、年俸に関するデータを掲載している様々なWebサイトをみると、日米のプロ野球の年俸に関する情報量の違いをあらためて感じます。

 それは、MLBとNPBに対する世界的な注目度や言語の壁といった本質的な要因が大きいのでしょうが、それだけではないと考えます。年俸などのおカネに関する数字が世に広く知られることが、興行上、重要な要素であると考えるか否か。その意識の違いも大きいでしょう。

 MLBの選手の契約内容は、金銭の条件はもちろんのこと、家族分も含めた航空券の費用負担などの様々な付帯条項まで明らかになります。一方、日本のプロ野球においては、あけすけな選手が契約更改後の記者会見で年俸について時々明かすことはあっても、契約内容の詳細を当事者以外に明かすことは決してありません。ですから、年俸はすべて推定として取り扱われます。

 年俸は個人情報のなかでもとりわけデリケートなものであり、世の中にさらすようなものではないという考え方があります。その考えは間違いではありません。加えて日本では、おカネは不浄のものであり、報酬額は他人に明かすようなものではないという文化的背景もあります。

 一方で、プロスポーツ選手の報酬は、先に記したように、世界最大級の経済誌をはじめ各種媒体が頻繁に特集を組むなど、世界中が興味を示す対象であり、夢の世界の演出に欠かせない情報でもあります。また、加工できるデータを提供することは、周辺産業の活性化を促し、業界の裾野の拡大にもつながります。

 通常のビジネスでは、契約内容は厳しく守秘管理されるもの。しかし、プロスポーツ選手の報酬や契約内容は、必ずしも知られたくないが“part of the show”だから仕方がない、と北米のプロスポーツ関係者は考えています。

 選手のプライバシーとファンの興味はどちらも重要ですが、しばしば相反するものです。どちらか一方を選択して、片方は捨てるという、二者択一ではダメでしょう。要はバランスなのですが、ファンが強い関心を持ち、興行としての価値に大きな影響を与える選手の年俸は、やっぱり北米流にガラス張りがいいでしょう。

 それと、もうひとつ。外国人選手を含まないことで実態より低い金額になっている選手会発表の「日本人選手の平均年俸」が、 「日本の“プロ野球選手の”平均年俸」として独り歩きしていることに対して、プロ野球業界は是正を働きかけるなど、もっと注意を払うべきと思います。

 「おカネじゃない」とは言うけれど、プロスポーツの魅力の一つは、その多額な報酬です。どんな業界であれ、多額の報酬によってファンの夢を育み、事業の裾野を広げ、優秀な人材を集めるのが定石ですからね。