平均年俸は外人選手を入れると大違い

 一方で、この選手会調査の数値が、「日本におけるプロ野球選手の年俸」として各種媒体や研究者の間で扱われているケースが多々ありますが、それは正しくありません。選手会調査の年俸は、NPB所属球団でプレーする日本人選手の年俸の推定値で、外国人選手が含まれていないからです。

 スポーツ選手の年俸や報酬は、大手の経済誌であるForbesが特集記事を毎年組むなど、様々な媒体が取り上げ、多くの注目を集める数字です。それぞれの種目の業界の立場からみると、他種目の業界との様々な比較対象となるため、その業界の価値を左右する重要なデータでもあります。

 例えばプロ野球の業界では、日本から米国のMLBへの人気選手の流出によって、観客動員数やテレビ中継の視聴率が低下する問題が心配されています。そこで本稿では、外国人の年俸を加えたNPBの平均年俸を試算したうえで、より真実に近い数字を示し、MLBと同じ土俵に載せて比較してみたいと思います。

 外国人を含めた「日本のプロ野球選手の年俸」は、選手会調査の「日本人プロ野球選手の年俸」と大きく異なることは想像に難くないでしょう。昨年は、セリーグで投手の最高峰である沢村賞に輝いたジョンソン(広島)、パリーグでは本塁打王のレアード(日本ハム)、サファテ(ソフトバンク)など、主力に外国人がずらりと顔を連ねていました。

 週刊ベースボールが毎年2月に発表している12球団の総年俸の推定数値によれば、外国人選手と育成選手も含めた全891人の年俸総額は367億円、単純に人数で割り算すると4120万円となります。

 ただし、これでもプロ野球選手の年俸としては正しい数字ではありません。育成選手は、公式戦への出場資格がない選手予備軍であり、プロ野球選手ではないからです。そこで、2月時点での育成選手97名を除いた794名で計算すると、プロ野球選手の平均年俸は4575万円となります。この4575万円が、外国人を加えたプロ野球選手の平均年俸として、もっとも近い推定値でしょう。

 そのうち外国人選手は61名。その年俸総額は、金額にして推定81億円、割合にして22%となります。冒頭に記した、日本人選手734名を対象にした選手会が調査した結果は、年俸総額が279億、平均年俸は3826万円でしたので、外国人選手が加わると約750万円増える計算になります。

次ページ NPBとMLBの年俸差は定説とは異なる