スポーツを賭けの対象とすることは、公序良俗の観点から、あるいは八百長を誘発する危険性の観点から反対の声が多くあり、それらはとても説得力があると思います。しかし、こうした良識的な声が、いくら海洋という天然の要塞がある日本といえど、世界の潮流に対してどこまで抑止力を保つことができるかというと、懐疑的にならざるを得ません。

 なぜならば、ギャンブルはボーダーレスなサイバー空間でのやり取りで事足りる産業ですから、日本において違法ではあっても、取り締まるのが極めて困難だからです。

日本のプロスポーツも対象の英国ブックメーカー

英国ではサッカー場内にもブックメーカーの投票所がある。(写真:Press Association/アフロ)
英国ではサッカー場内にもブックメーカーの投票所がある。(写真:Press Association/アフロ)

 まずは外国の現状をお伝えしましょう。例えば英国は、ギャンブルに対する規制が最も緩やかな国の一つです。ブックメーカーと呼ばれる胴元は民間企業で、天気をはじめ不確実なものすべてを賭けの対象としています。プロ野球、サッカーJリーグ、大相撲を含めた日本のプロスポーツも賭けの対象であり、日本の顧客のために、日本語サイトも開設しています。日本から賭ける行為は合法ではありませんが、無修正ポルノと同様、クレジットカードを使いWebサイトを通じて賭ける行為を取り締まるのは容易ではありません。日本からの賭け金が、1円も課税されることなく、海外に流れていることも大きな問題です。

 米国は、日本と同様にスポーツを賭けの対象とすることに対して極めて厳しい姿勢を取ってきましたが、最近では合法化して課税対象にしようという動きが広がっています。米国というと、カジノで世界的に有名なラスベガスの存在から、ギャンブル大国をイメージする方もいることでしょう。実は、ラスベガスのあるネバダ州を除くと、1試合の勝敗を対象としたギャンブルは違法なのです。(日本のtotoのように、複数試合を対象としたものは、デラウェア州、モンタナ州、オレゴン州で合法です)

 ただし、米国の新聞のスポーツ欄には試合の勝敗予想がハンデを含めて詳細に解説されていますので、スポーツが仲間うちでギャンブルの対象になっていることは暗黙の了解なのでしょう。日本における麻雀みたいなものですかね、というと、どこかの元市長のように炎上するかしら。

 しかし、誰でもどこでも、サイバー空間を通じてスポーツ・ベッティングにアクセスできる現状を踏まえ、財政の厳しい州政府が合法化に向けて動き始めているのです。端緒となったのは、ニュージャージー州。1兆円近い赤字を抱え、財政破綻に瀕している同州では、2012年にスポーツ・ベッティングの合法化案が州議会を通過しました。ところが、これに対して北米4大プロスポーツリーグ(MLB、NFL、NBA、NHL)と全米の大学スポーツを統括するNCAAがニュージャージー州を提訴しまして、現在は最高裁で争われているという段階です。

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