事業化先進国の米国ではNCAAが統括

 そしてガバナンスの問題もあります。大学運動部のほとんどは課外活動という名目で、法人格もありませんから、金銭の管理についても、事故や事件の際も、責任者が誰だか分かりません。こうした諸問題は、かつては性善説で、事件が起こるとOBに連絡をしたり、知り合いのつてをたどったりするなど、場当たり的に処理されてきました。しかし、部活にもガバナンスやコンプライアンスが求められるように時代は変わりました。各運動部の自主性に委ねるのではなく、大学が責任を持って運動部を管理・運営する必要が生じています。

 このように、潜在力と課題が交錯する大学スポーツ。何から取り組むのが良いかという議論のなかで浮かび上がってきたのが、大学スポーツが盛んな米国や英国には、大学スポーツを振興するための中央統括組織があり、日本にはそれがないことでした。スポーツ庁がタスクフォースを設置したのは、そんな経緯からです。

 このタスクフォースのサブタイトルに「日本版NCAAの創設に向けて」とあります。これは、ベンチマークとしているのが、米国の大学スポーツ統括組織である「NCAA」(National Collegiate Athletic Association=全米大学体育協会)と、各大学における学内組織であるアスレチック・デパートメントだからです。

 NCAAとは、110年の歴史をもつ大学運動部の統括組織で、全米の大学2300校中1100校が加盟しています。NCAAは所属大学をその規模に応じて「ディビジョンI」(D1)、 「ディビジョンII」(D2)、「ディビジョンIII」(D3)の3つに階層化しており、D1で最も高いレベルのスポーツ競技が実施されています。ちなみに、D1は約350校、D2は300校、D3には450校の大学が所属しています。ディビジョン間の昇降格はありません。

 そして、それぞれのディビジョンは、複数のカンファレンスに分かれています。NCAAは、そのカンファレンスを通して、参加校を統括しているのです。その役割は、アメリカのプロスポーツの中央統括組織に似ていて、以下のように主に3つあります。

 上記3つの業務を行うために、NCAAは専従職員だけで500人を雇用しています。また、各大学には運動部を統括する専門部署(アスレチック・デパートメント)があります。こうした米国の大学スポーツ界の体制を知ると、恐らく「日本にもそんな組織が必要だよね」と思われるのではないでしょうか。