【順当】テレビとネットによる放映権の奪い合いが激しく

 大谷のみならず、野球選手そして野球ファンが憧れるMLB。そのブランド力を支えているのは歴史と伝統でもありますが、何といってもマネー。新しい労使協定でその可能性はなくなりましたが、大谷との契約は10年300億円になる可能性が噂されるほど資金は潤沢で、年商は1兆円を超え、平均年俸は500万ドルです。

 その隆盛を支えている原動力が、売上高の43%(推定)を占める放送権料です。録画機器のCMカット技術の進化とインターネットによる動画配信の普及によって、ドラマやバラエティなどの番組に挿入されるCMの広告効果が薄れるにつれ、放送業界がCMを見てもらいやすいスポーツのライブ中継に活路を求めた結果、その放送権料がうなぎ登りを続けてきたのが21世紀のこれまでです。実際、MLBのテレビ放送権料も倍々ゲームで、ざっと言ってこの20年で4倍以上になっています。

 ところが、さらなるインターネットの進化の影響を受けて、このテレビ放送権料も少し怪しくなってきました。例えば、世界最大のスポーツ専門局ESPN。ディズニー傘下である同社の推定売上高は1兆3000億円と、フジテレビを抱える日本最大手のフジ・ メディア・ ホールディングスの倍以上です。この大巨人の売上の根幹をなしているのが、ケーブルテレビや衛星放送の配信事業者から配信世帯数に応じて支払われるマージンなのですが、いまや時代はOTT。OTTとは、Over-The-Topの略語で、インターネットで動画や音声などのコンテンツを提供する事業者のことです。NetflixやHuluなどが有名ですね。

 いまアメリカでは、高額なケーブルテレビや衛星放送を解約して、こうしたOTTに鞍替えする現象(コード・カッティング~cord cutting)が顕著になっており、ケーブルテレビの躍進の申し子でもあったESPNは、その余波をまともに受けているのです。実際、ESPNの視聴世帯数は6年連続して減少しており、特に2016年には300万人が流出して8800万人になりました。2017年も少なくとも300万人以上の流出が確実と見込まれています。

 さらに話を複雑にしているのが、例えばMLBでいえば「MLBAM」など、スポーツ団体が自前のOTTを既に確立していることで、米国以外の国々でも年間1万2000円ほどの加入料を払えばMLBのすべての試合をライブ観戦できるほか、アーカイブ(録画映像)や球団の戦術、選手データなどの分析ツールにアクセスできる優れものです。米国内では、ESPNなどテレビ局に販売している放送権料との絡みで、ライブで放送する試合は限定したものになっていますが、テレビ放送権料が減り出せば、それもどうなるか分かりません。

 日本においても、「スポナビライブ」というOTTを持つソフトバンクが、プロバスケットボール「B.LEAGUE(Bリーグ)」の放送権を5年200億円(推定)で購入。イギリスのOTT(パフォーム・グループ)は、プロサッカー「Jリーグ」の放送権を10年2100億円で買い取るなど、その破格の権利料ともあいまって、OTTの存在感が高まっています。

 スポーツ団体にとって、放送権の扱いは、その命運を左右するビジネスの肝です。権利料も重要、ファンが容易にコンテンツへアクセスできるようにすることも重要。スポーツ団体が、どのような経営判断を下すのか? テレビ局、OTTなど各メディア入り乱れてのバトルロイヤルが、どのように展開していくか要注目です。