二刀流への挑戦は柔道への意欲にもつながる!?

 こうした彼女の決断に、もしかすると懐疑的な声もあるのかもしれない。

 朝比奈選手は昨年の講道館杯全日本体重別選手権で女子初の4連覇を達成。今年も体重無差別で争う4月の全日本女子選手権を初制覇した。ハンガリーで行われた世界選手権78キロ超級では銀メダルに終わったものの、前述の無差別級選手権では世界チャンピオンに輝いている。

 大学柔道部という厳しい環境に身を置くことで、その強さをさらに伸ばすことができる。フリー(ひとり)では甘さが出てしまうのではないか。それでは東京五輪金メダル候補の将来が心配だ。こうした声にも説得力はある。

 しかし、これだけのレベルの選手になったら、これからの課題は本人のモチベーションと自覚の問題だと思う。その意味では、大学柔道部を離れてフリーで戦うことは、彼女の自覚をより高めるのではないかと私は思っている。そればかりか、五輪後に医学部への進学を目指すことで、柔道と勉強への意欲は今まで以上に増すのではないかと期待している。

 スポーツ界は今、プロ野球北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手の二刀流(投手と打者の両方に挑む)に注目が集まっているが、朝比奈沙羅選手の選択もこれもまた見事な二刀流と言えるだろう。それは同時に2種目にチャレンジする形ではないが、時期をずらして柔道と医学に挑むという立派な二刀流だ。

 明確な目標が決まることで私たちのエネルギーはより集約される。やるべきことに迷うことなく向かうことができる。朝比奈選手には、「こうした道(選択)もあるんだ」ということを後進に伝える意味でも、この二刀流を是非やり遂げてもらいたいと思っている。

 得意技は、「払腰(はらいごし)」と「支釣込足(ささえつりこみあし)」。いや、「柔道」と「学業」だ。