バカボンのパパよろしく「それでいいのだ!」

 

 仮契約後の記者会見で、根尾選手は以下のことを明かした。

 冒頭、彼はこう口にしたのだ。
 「(二刀流ではなく)ショート一本でいかせてください、と伝えました」

 (記者)いつ決心したのか?
 「高校1、2年の時に決めていた」
 「入った時は試合に出たかった。投手の方が出る機会があると思った」

 (記者)二刀流については?
 「評価していただいていたので、球団によってはと考えていた。(中日には)自分の気持ちを尊重していただいた」

 これを聞いて、私は正直「やられた……」と思った。

 テレビで彼についてコメントを求められた時にも、「しばらくは両方やるのではないか」と二刀流の可能性に言及してきたからだ。しかし、彼の中ではもうすでに「ショート一本」でいくイメージができあがっていたのだ。それも高校1,2年生の時から。

 我々は、完全にだまされていたのだ。でも、私はこの「裏切り(本人にまったく責任はないが)」が、この上なく痛快でならなかった。そして、私は「天才バカボンのパパ」よろしく、こう思った。

 それでいいのだ!!!

 競争の厳しい大阪桐蔭で試合に出場するためには、投手の方が出番は早い。それならば、監督に投手をやれと言われれば、喜んでマウンドに上がる。ショートをやる前は、外野も守っていた。プロ野球でも、チーム事情で「二刀流」をやれと言われれば、本人の言葉通りいとわず両方やったことだろう。しかし、漏れ聞こえてきたところによれば、中日は当初から根尾君に「ショート」を打診しており、根尾君もその意向を球団に伝えていたというのだ。

 思い出すのは、ドラフトのテレビ中継だ。中日(与田監督)が抽選の末に指名権を獲得した直後、学校の記者会見場にいた根尾君の顔がアップで映った。その時は、あくまでも私の印象だが……あまりうれしそうな顔ではなかった。

 もしや行きたかった球団は、中日ではなかったのか??? その時には、そんな感想を抱いたのだが、これもきっと彼にだまされたのだろう。本当は「ショート一本」と決めていながら、ここまで胸の内を明かさなかったのだから、自分の内面を隠すぐらいのことは朝飯前だろう。

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