派閥を乗り越え力を結集

 しかし、それが家族のような関係にまで発展するのは、難しいことだ。理想としては「そうありたい」と願っても、同じポジションの選手ならば、ある意味ではライバル同士だ。高卒組、大卒組、社会人野球出身など、さまざまなグループができることも悪いことではない。同窓生や同じ出身県などでグループが作られることもある。

 世間的な言い方をすれば、野球界にもさまざまな派閥があったりするのだ。それは、どこの職場でも同じことが言えるだろうが、多様な背景と価値観を持っている人たちが集まったときに、それを家族のように束ねることは、実は容易なことではない。

 今シーズンで引退する新井が、たとえ家族と表現してもチーム内には違う意識の選手たちがいる可能性もある。しかし、それでも私がこの発言に感心したのは、カープ内で「兄」や「弟」そして「家族一丸」という言葉が使える環境にあるということだ。そうした意識や感覚がないチームでは、こうした表現を使うことはないだろう。

 勝利を甘い果実に例えれば、家族一丸となって樹木の面倒を見れば、収穫する果実も甘くなる……という非科学的な論理に聞こえるかもしれないが、スポーツにおいては、そうしたことがよく起こるのだ。

 もうひとつ、広島有利の材料を挙げておこう。

 2年前の日本シリーズ。北海道日本ハムファイターズが広島に勝って日本一になった晩、室内練習場で深夜まで一人でバッティング練習をしていたのが鈴木誠也だ。その鈴木は、去年は足の骨折でCSにも出場できなかった。2年越しの雪辱。このシリーズで4番・鈴木の活躍を期待しない訳にはいかない。

 鈴木も新井のことを「兄」と慕う「弟」の一人だ。

 ソフトバンクが勝つとすれば、2位から駆け上がってきた勢いと失うものがない強さが炸裂したときだろう。柳田悠岐やデスパイネには、大暴れの可能性が十分にある。

 広島にとっては怖い相手だが、2年連続で日本一を逃しているチームのモチベーションとケミストリーは、極めて高い状態にあると言えるだろう。甘い果実は、カープが手にする。

 さて、結果やいかに……。

(=一部敬称略)