オアフ島ノースショアの潮風

 その競技を匂いや風で記憶する代表は、やはりマリンスポーツだろう。サーフィンやセーリングを観に行くと、競技の結果よりも潮の香りの方が強く印象に残っていたりする。米ハワイ州のオアフ島ノースショアで観たサーフィンの大会では、潮の香りが小さな粒になって飛んでいた。

 まだいくらでもスポーツと香りの関係を挙げることができるが、このくらいにしておこう。

 冒頭に今回の原稿を「難しいテーマ」と書いたのは、これがいったい誰の役に立つものなのか……ということを具体的に想像できなかったからだ。ここまで書いてきてもその思いを完全に拭い去ることはできないが、ただとても大事なことに向き合っている気がしてならない。

 まず、スポーツの現場には、そこでしか感じることができない五感に刷り込まれる深い記憶があるということだ。それはトップアスリートたちが集う大きな大会ばかりではない。スポーツ大会の大小を問わず、私たちはその記憶を香りや匂いでも覚えている。そしてそれは忘れがたい記憶となって長い間、私たちの中に留まっているのだ。

 また、スポーツ大会を運営する側に立つならば、それは飲食店などと同じように、ゴミやトイレの匂いなどは大敵だ。それがあるおかげで大切なスポーツの記憶が台無しになってしまう。香りや匂いは、より強烈な、あるいは刺激的なものに取って代わられてしまうからだ。その匂いが漏れてくるトイレの側の席で、どんなに美味しいものを食べても、どんなに素晴らしいスポーツシーンを見ても、もう来たくないと嗅覚が記憶する。これはあくまでも私の生理的感覚だが、あながち私だけに起こる反応ではないような気がする。

 これからはスポーツも、香りや匂いをより意識する時代になるのではないだろうか。テレビももうすでに、画面に応じて匂いがする技術が開発されている。どんなことであれ現場にはたくさんの匂いがある。テレビが臨場感を求めるなら当然のことだろう。そして私たちは、その匂いからたくさんの情報を得て、多くのことを考えるのだ。

 五輪やパラリンピックの施設でも香りや匂いが、快適さを演出する大事な要素になるだろう。そしてその時間と思い出は、匂いとともに記憶される。

 香りの話だけに、なかなかつかめない内容になってしまったが、スポーツも私たちの日常も、幸福な時間は良き香りの中で作られていくのだ。

 芳香(ほうこう)が教えてくれる進むべき方向(ほうこう)。

 締め(オチ)が臭いのは、ご容赦を!