角界のウインブルドン現象

 テレビでご覧になった方もいるだろうが、これから述べることは9月30日のプライムサンデー(フジテレビ)でも少しだけ話したものである。補足したいこともあるので改めて文章で書かせていただこうと思う。

 今、大相撲界に横たわる本質的な問題は、「ウインブルドン現象」なのだと思う。「ウインブルドン現象」は経済用語で、外国の資本に地元の産業や商業が駆逐されてしまう現象のことである。テニスのウインブルドン大会では2013年に英国のアンディ・マレー選手が優勝するまで約80年間地元の男子選手が勝てなかった。
女子も1977年にバージニア・ウェード選手が勝って以来、40年以上英国の選手が優勝から遠ざかっている。

 これは英国にとっては残念な事態だが、ウインブルドンという大会にとっては、それだけオープン化と国際化が進んだということ。同時にそれがこの大会の世界的なステータスになっている。言うまでもないが、大相撲でもこの傾向が年々進んでいる。今やモンゴル勢をはじめとした外国人力士が上位陣を占め、大相撲人気を牽引している。その意味で、横綱・稀勢の里は「ウインブルドン現象」に対する救世主であり、日本国民の期待の星なのだ。これについては本コラムでも以前書いた通りである。

 今回の事件の発端は、飲食の席で日馬富士が貴ノ岩に暴力をふるってケガをさせたことにあるが、そもそも貴乃花親方は弟子の貴ノ岩にモンゴル勢の集まりに参加することを禁じていた。土俵で戦う者が、日ごろから仲良くしていたのでは、いろいろなことを疑われかねないと言うのが貴乃花親方の教えだ。そこで貴ノ岩はモンゴル出身でありながら同郷の力士たちとは一線を画していた。

 ただ、この時は、貴ノ岩が高校時代を過ごした鳥取の母校の集まりということで参加が許されていたようだ。

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