優勝の原点、4番・鈴木「あの夜のバッティング」

 ただ、私は今回の優勝を語るに当たって、やはり「あのこと」は忘れてはいけないと思っている。それは去年、北海道日本ハムファイターズと日本シリーズを戦った広島が、第6戦で敗れて日本一を逃した晩のことだ。

 ナイトゲームが終わり広島の本拠地ズームズームスタジアムにも人けがなくなった頃、鈴木誠也がその悔しさをぶつけるようにバッティングマシーンを相手に一人、室内練習場で打撃練習をしていたのだ。

 以前、このことは鈴木誠也が「4番を任される背景」として取り上げたが、あのバッティング練習が広島というチームに流れる基本的な旋律だと思っている。

 悔しかったら練習する。
 負けた時には、何とかその負けを取り戻す。
 勝っても負けても、やるべきことを見失うことがない。

 そうした意識が、このチームには伝統として流れている。そして、その高い意識を体現しているのが4番を任された鈴木誠也なのだ。

 広島に流れるどこまでも勝利を希求する旋律。今回の優勝は、鈴木が見せた「あの夜のバッティング」から始まっているような気がしてならない。

 鈴木は言う。
「大事な残り30試合にいなければ意味がない。僕は何もできなかった」

 12月に予定されている優勝旅行にも、もうすでに不参加の意向を示している。「最強になって帰ってきます」とリハビリと練習に明け暮れるつもりだ。

 鈴木誠也はまだプロ5年目の23歳。こうした若い選手の自覚に広島の強さがにじみ出ている。