
喜びの復帰登板から一転、残念過ぎるニュースが届いた。登板後のMRI検査の結果、大谷翔平選手の右肘に新たな靭帯損傷が見つかったというのだ。ドクターは、腱の移植手術を勧めているという。以下の文章は、この時期(シーズン終盤)の復帰に疑問を感じつつも「それが大谷翔平のスタイルなのだ」と 彼の本質について考えた原稿だ。書き上がった直後に最悪のニュースが飛び込んできた。覚えていた懸念を払拭するように書いたが、結果的には悪い予感が当たってしまった。まずは、復帰直後の原稿をそのままお読みいただこう。
日本時間9月3日、米大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が、約3か月、88日にぶりに投手として復帰を果たした。敵地ヒューストンでのアストロズ戦。3回途中まで49球を投げて失点2、被安打2、奪三振2、四球2で2敗目を喫した(ここまで4勝2敗)。今回は、この登板の是非について考えたいと思う。
6月に肘の違和感を覚えた大谷選手は、それ以降ピッチングを回避し、トミージョン手術(腱の移植)を受けることなく、PRP注射(自分の血小板を注射して治癒力を高める)を受けて回復を待つことになった。右肘内側側副靭帯の損傷だった。その間は、打者としての出場を続けていた。8月は打率3割2分8厘、6本塁打と打撃でチームに貢献。そのままバッティングに専念して今シーズンを終えるのも有力な選択肢だと思われていた。
ところが大谷翔平は、マウンドに戻ってきた。経過は順調で、メディカルチェックもパスしての登板だけに、肘への心配は払拭されている状態なのだろう。私も以前、彼を取り上げた当コラムで夏以降に復帰できれば万々歳だと書いた。ただ、それはあくまでもチームが優勝争いをしている前提でのことだ。大谷はその時点で投打に欠かすことのできない存在になっていたからだ。彼の一日も早い復帰をソーシア監督もチームメイトも待っていたことだろう。
しかし、状況は変わった。
チームは優勝争いから脱落し(3日ゲーム終了後、首位アストロズと18ゲーム差の4位)、主砲のプーホールズも膝の手術で離脱している。ここで大谷を無理させる必要はまったくない。それゆえに全米の多くのメディアもこの時期の復帰登板を懐疑的に報じている。
そして私も、今シーズンはもう投げない方がいいと思っていた。もっと言えば、投げるべきではないとすら考えていた。しかし、大谷は喜々としてマウンドに上がった。
もちろん彼の復帰は喜ぶべきことだ。ただ、シーズンは残り1か月。
ここで無理する必要はないだろう。シーズンオフまで使えば、ゆっくりと肘を休ませることができる。
頼むから我慢してくれ! 正直、そう願っていた。
しかし、当の大谷はどこ吹く風である。それどころか登板に当たって、こんなことを言っている。
「投げられるのに、投げないという選択肢はない」
こうなるともうお手上げである。白旗を掲げて好きに投げてもらうしかない。
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