修行僧のような日常で育まれる強さ

 冒頭の藤原君の野球に対する姿勢は、彼の成長を支えた大きな原動力だが、ある意味では大阪桐蔭の選手がみんなで共有する感覚なのだと思う。

 大阪桐蔭の野球部員は全員寮生活で基本的には休みなく練習に取り組んでいる。携帯電話も預けて、外出禁止。みんなで買い物に行くのは、月に一回、予算は1年生が500円、3年生でも1500円と決まっているらしい。

 しかし寮生活では上級生も雑務を担当し、下級生だけが掃除や雑用を任されているわけではないようだ。部屋割りも3年生は3年生同士で、2年生は2年生同士で、1年生は1年生と部屋で過ごす。これも変な上下関係ができないように配慮されてのことなのだろう。

 見方によってはまるで修行僧のような日常と言えるのかも知れないが、決してこうした生活を強要しているわけではない。選手たちは、自ら望んでこうした環境に飛び込んで、自分たちの成長とチームの勝利を求めているのだ。

 こうした指導で常勝軍団を作っている西谷浩一監督は、社会科の教員であり、選手たちと一緒に寮に住み込んで同じような日々を送っている。

 彼はすべての選手との対話を実行し、それぞれが上手くなるために意見を交わしている。興味深いのは、入学時からすべての選手にバッティング(登板)を保証している点だ。チャンスは全員に平等にあるのだ。そうした競争の中から、みんな自分で努力してレギュラーをつかんでいく。

 大阪桐蔭の強さと同時にもう一つの特筆すべき点は、数多くの卒業生がプロ野球で活躍していることだ。その数は、現在16人に上る。

 埼玉西武のおかわり君こと中村剛也選手や浅村栄斗選手、森友哉選手、日本ハムの中田翔選手や阪神の藤波晋太郎選手などもそうだ。

 こうした選手を取材して感じることは、彼らが伸び伸びと自分の個性を発揮していることであり、厳しい高校時代の生活で燃え尽きてしまっているようなところがまったくないことだ。大阪桐蔭の選手たちは、野球への旺盛な意欲をもってプロの門をくぐり、多くの選手がそれぞれのチームで大きな飛躍を遂げている。このことも西谷監督の指導方針の素晴らしさを物語る要素と言えるだろう。

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