「判定は僕らの問題ではない」

 勝つか負けるか。すべてをリングの上で決するのがボクシングならば、もうこれ以上何も語るべきではないのかもしれない。だから10月のタイトルマッチの行方については、「試合を見るだけだ」ということで留めておこう。

 ただ、村田についてはもう少し触れなければならない。彼がこれまで取ってきた言動は、「感心」というより「尊敬」に値する。

 5月の疑惑の判定に対しても、彼は一度も不満めいたことを口にしたことがない。そればかりか、あの一戦を振り返って「火に油を注いでもらった」とボクシングに対する思いをさらに熱くした。また、それまでは自分のボクシングに対して半信半疑だったが、一流選手と互角に戦えたことで今後に向かって大きな自信を手に入れたとも語っている。

 思い出すのは、不可解な判定負けを喫した翌朝のことだ。村田は、同じホテルに泊まるエンダムに電話をする。そして帰国の途に就くエンダムとホテルのロビーで会うことにした。この時、村田はエンダムにこう言ったそうだ。

「判定は僕らの問題ではない。素晴らしい経験をありがとう。昨日は敵だったけど、今日は友だ」

 判定は僕らの問題ではない…。なんとすごい視点だろう。