脱力が新たなパフォーマンスを生む

 手応えをつかんだ投球を武田はこう説明している。

 「いい感じに力が抜けていた。自分の中でも腕がたたけていた」

 腕がたたけていた…とは、思い通りに振れていたということだ。

 遠投がヒントをくれるのは理に適っている。遠投は速い球を投げる必要はない。求められるのは「どうやったら遠くまで投げられるか」と言う工夫だ。そのためには力を抜いて、身体全体を大きく滑らかに使う。それができればボールは遠くまで飛んでいく。

 そしてボールを遠くまで投げられるそのフォームを使えば、実はより速いボールを投げることができるのだ。いやスピードというより、伸びのある打者にとって打ちにくいボールが投げられるようになるのだ。

 脱力に勝るパワーなし。これを私たちの日常にどうやって生かすか。それはもうすでに誰もがやっていることだろう。大きな課題や仕事の前で、深呼吸でもして冷静になる。コーヒーを飲んだりスポーツで身体を動かしたりするのも同様のアプローチだ。リラックスすることで思考や集中力が集約される。

 弛緩(しかん)があるから、良き緊張が生まれる。その意味では、この時期の夏季休暇にも脱力を促す知恵があるのだろう。良き休み(脱力)が、良き仕事を生む。

 本来の投げ方を取り戻した武田が言った。

 「今日は自分に期待できた。たくさん迷惑をかけたので、前半戦の穴を埋められるようにしたい」

 エネルギーがチャージされてきたことがうかがえるコメントだ。 

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