5月の不振で揺らいだ“ENJOY BASEBALL”

 柳田の技術的な特徴は、とにかくバットを強く振れるところにある。速いスイングは、大きな飛距離をもたらす。横浜スタジアムの電光掲示板を破壊した一打はファンに強烈な記憶を焼き付けた。

 また、もう一つの特徴は左バッターでありながらレフト方向へも大きな当たりを打つことだ。バッテリーが長打を警戒して外角を攻めても、甘くなったボールをレフトスタンドに運んでしまう。シングルヒットなら仕方がないと思わせるバッターだ。

 足を早めに大きく上げてゆったりとタイミングを取ることがパワーの源になり、さまざまな投球への対処を可能にしている。ホームランだけでなくチャンス(得点圏にランナーがいる場面)に滅法強いのも、ボールをしっかり見極めて鋭いスイングを繰り出すことができるからだ。

 この他にも打球の角度を生む体軸の作り方や少ない体重移動など、柳田のバッティングには優れた技術が数多く発揮されているが、その紹介は本コラムの役目ではないだろうからこのくらいにしておこう。

 柳田選手に興味深い話を聞いたのは、4月のゾゾマリンスタジアムだった。去年の成績を踏まえて今シーズンのバッティングについて尋ねた時だ。どんな気持ちで打席に入っているのか?

 「去年はいろいろと考え過ぎてしまっていたところがあって上手くいかなかった。と言うか楽しくなかった。だから今年は結果を考えずに、とにかく楽しく打席に入る。もちろん相手のデータを見たり研究したりはしますが、打席に入ったら難しいことを考えずに、来たボールを力強く打つ。明るく楽しい気持ちで打席に入ることを心掛けているんです」

 身長188センチ、体重93キロ。恵まれた体格と抜群の野球センスがあってこそ残せる好成績だが、メンタルも極めて重要な要素だ。あるいはそれが充実しなければ、どんなに恵まれたフィジカルもそれを活かすことができない。

 しかし、開幕から「楽しく」を意識してきた柳田も5月になると不振にあえぎ、審判の判定に不満を漏らすようになっていた。その怒った表情を隠すために、サングラスをかけて打席に入ったこともある。