言い訳なし、打者に敬意

 そこに言い訳がましいことはなにひとつなかった。あるのは、「今の自分でどう戦うか」という決意と「打たれた相手への敬意」だけだ。

 開幕前に松坂にストレートに聞いた。「今シーズンは、何で勝負しますか」。

 すると彼は言った。「いままで培ってきた経験で勝負します」。

 松坂は、今の自分がかつての自分でないことをよく知っている。それは厳しく、残念なことだが、それでも彼はまだまだ諦めていない。「あらためて緩急の大事さが分かりました…」。これは彼の中にある希望であり、戦い方の処方箋だ。

 1回に5失点。これだけ打たれたことは、悔しさ以外の何物でもないだろうが、その中で冷静に「今の自分を知る」作業が行われている。負けの中に、次への指針を見つける。きっとこの姿勢を強さと言うのだろう。

 「真っ向勝負するには難しい球でした」

 だとすれば、どういう球で勝負しなければいけないのか。その答えは、後半戦のペナントレースで披露してくれることだろう。

 孤高のライオンは、まだ風に向かって歩いている。

(=敬称略)