「自分が求めている、理想とする姿は、そこにはもうなかった」
1985年6月19日生まれ。32歳になったばかりである。
この年齢での引退が早いかどうかは分からないが、多くの関係者が「まだまだできるのではないか」とその引退を惜しんでいる。前述のサントリー・レディースに駆けつけたファンも同じ思いを抱いていることだろう。
ここ数年優勝から遠ざかっているとはいえ、国内での人気はいまだにトップクラス。CMにも多数起用され、多くのファンが彼女のプレーを見たがっている。
そんな中での引退表明。宮里藍は何と向き合い、何を感じていたのだろうか。記者会見で語った彼女の言葉をもう一度見てみよう。
引退の理由は?
「モチベーションの維持が難しくなった。自分とも向き合えないし、今までやれていた練習ができなかったり、トレーニングでも追い込むことができなくなった。自分が求めている、理想とする姿は、そこにはもうなかった」
ケガや故障、加齢からくる衰え…。スポーツ選手には避けられない引退も数多くあるが、やはり一番手強い敵は、「モチベーションの低下」だろう。それはスポーツを生業にするプロ選手だけでなく、どんな職業の人にも言えることだろう。
「まだやりたい」という意欲があるうちは、たとえ成績が芳しくなかったとしても、そこを抜け出す努力に傾注することができる。しかし、ひとたび「もういいか」と思い始めると、それまで続けてきたすべての活動に意味を見出せなくなってしまう。
モチベーションの低下を招く要因には以下のようなことが考えられる。
- 心身の疲れ
- 肉体的な衰え
- 目標を叶えたことからくる達成感
- 頂点を極めた感覚(世界ランキング1位など)
- 経済的な潤い
- 高い人気と周囲からの認知
- 不本意な姿を見せたくないというプライド
- もう勝てないのではないかという恐怖
こうしたことをひと言でいえば、「物心両面においてハングリーが満たされてしまった」ということなのだろう。
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