指摘として最も信憑性があるのは、高速のボールを投げ過ぎることから生まれる故障かもしれない。当たり前のことだが、速い球は腕が速く振れているからこそ投げられるボールだ。大谷は誰よりも腕を速く振ることができる。だからこそ時速160キロを超えるボールを投げることができる。球種を問わず、「よりスピードのあるボールを投げていた投手に故障が起こる確率は高い」という調査結果もある。プロ・アマを問わず、あるいは草野球の選手でも、気持ちよく軽く投げている人には、深刻な故障は起こらないだろう。どこかで身体の限界を超えて投げているからこそ、そのストレスが肘や肩に出る。大谷の故障の原因は、そこにあると考えるのが妥当ではないだろうか。ルーキーの彼は、開幕から全力投球でアピールする必要がある。ストレートも変化球も手を抜くことなく100%に近いモードで投げていたことだろう。

怪我乗り越え投球法の変更迫られる

 このまま「PRP治療」が功を奏して夏以降に復帰できれば万々歳だが、もし「トミージョン手術」となれば、来シーズンも棒に振ることになるだろう。彼は、いったいどうなるのか? 大きな心配は尽きないが、今回の故障を乗り越えた先に大谷に迫られることがあるのは確かだ。それはプレースタイルの変更だ。

 もう時速160キロを連発するようなピッチングはしない方が良いだろう。それを諦めることを強いられる気がする。必要なのは、「二刀流」を確立するためのフィジカル・マネジメント。

 ヤンキースの田中将大投手が良い例だ。彼も故障する前は、時速150キロ台のボールを連発していたが、今では時速140キロ台のボールと変化球のコンビネーションでピッチングを組み立てている。つまり100%の力で投げてしまったら、また故障を誘発してしまうので、常に全力の一歩手前くらいの力加減で投げているのだ。そして、その状態でコンスタントに投げられる(戦える)ことを「プロフェッショナル」というのだろう。

 いくら速い球を投げても、ケガや故障でマウンドに立てなければ「天才」や「レジェンド」と呼ばれても、チームに貢献することはできない。

 これは私たちの仕事や日常においても同じことが言えるだろう。

 「無事之名馬(ぶじこれめいば)」とは、ケガや故障がないことへの評価だけでなく、コンスタントに活躍することの意義を謳っている言葉でもある。

 ケガの功名は、多くの場合、合理性を追求し現実的になることだろう。それはどこか悲しくもあり、しかし美しく逞しくもある私たちの現実だ。

 帰ってくる大谷翔平に求められることは、二刀流の「天才野球選手」からコンスタントを旨とする「プロフェッショナル」に転身すること…なのかもしれない。(=敬称略)