その時、プロゴルファー・上田桃子の表情を見て「乾いた顔をしている」と思った。独特の表現で申し訳ないが、私が感じるアスリートが勝つ時の印象だ。

 「乾いた顔」とは、「勝ちたい…」という欲や「どうなるのか…」という不安や「何がなんでも…」というような力みのない表情を評した言い方だ。緊張や欲望が昇華されて(あるいは消化されて)、目の前のプレーだけに集中する時に選手たちが見せる表情だ。

「今年勝てなかったらゴルフをやめよう」。重大な決意を秘めた上田桃子が土壇場で見せた表情とは?(ロイター/アフロ)

勝負どころの難しいパーパットで見せた“乾いた顔”

 中京テレビ・ブリヂストンレディースオープン最終日(5月21日、愛知県中京GC石野)。首位の上田は2位に1打差で17番を迎えた。上田の第2打はグリーンを捉えることができず、ラフの小さなくぼみにはまっていた。難しいアプローチだ。

 果敢に攻めた上田だったが、やはりクラブがトップ気味に入り、ボールはカップを大きくオーバーした。パーパットは5メートル以上あったと思う。

 ラインを読む上田。この時、彼女の顔がテレビに大きく映し出される。そして私は思った。乾いた顔をしている…と。

 打ち出されたボールがやや右のラインをたどる。「外れるか…」と思った直後、ボールは小さくフックしてきれいにカップに落ちた。

 ナイス・パー。

 ボギーは覚悟しなければいけない状況だと思ったが、これを沈めて上田は1打差を守った。

 続く18番は圧巻だった。2打目でグリーンに乗せた上田のボールは、ピンまで7~8メートルはあっただろうか。いやそれ以上の距離だったと思う。これも下りの難しいパットだった。しかし、アドレスに入った上田は、乾いた顔で躊躇(ちゅうちょ)なくこのボールを勢いよく打った。外れれば2~3メートルはオーバーしそうな強気のパットだ。

 これがど真ん中から入ってバーディー。右手を空に向かって突き上げる上田。その瞬間、3年ぶりの優勝が決まった。