「神ってる」とは言わせない、チームを鼓舞する4番に

 シーズンオフに鈴木が言っていたことで印象に残る言葉がある。それは「もう『神ってる』とは言われたくない」ということだった。去年、ミラクルなホームランやタイムリーヒットを打ち続けた鈴木に対して、緒方監督が言った「神ってる」の一言は流行語大賞にもなった。

 「神ってる」はまさに「神がかっている」という奇跡のような活躍を指した言葉であり、どこかに「信じられない」というような驚きが込められている。つまり予想もしていなかった期待以上の働きを評しているのだ。

 そして鈴木は、その驚きの表現を返上して「神ってる」と言われないようにしたいというのだ。つまり「神ってる」のではなく「それが常態だ」「それが普通だ」と言わせたいのだ。

 前述の4番に求められる「何か」を挙げるならば、鈴木のこうした向上心と圧倒的な打力で周囲から認められたいという、野球への純真といえるだろう。その姿勢がチーム全体に伝播して他の選手を鼓舞するばかりか、応援するファンにすら勇気を与える。見ているだけでワクワクする。

 真の4番とは、そういう存在のことだろう。

 こうした4番論は、野球に限らずあらゆる組織にも当てはまるはずだ。組織やグループにも求心力のある人材が必要だ。成績や結果で組織を牽引するのはもちろんのこと、もう一つの大きな役割は、その存在が有形無形に次の世代に影響力を及ぼすことだ。マニュアルやトレーニングだけでなく、4番的な存在が後に続く人たちを育てることになる。その人の一挙手一投足が、後輩にとっては模倣すべきテキストになる。

 だからこそ野村克也氏も、チームにとって4番を育てることが一番の課題だと看破しているのだ。

 ゴールデンウィーク中も4番に座った鈴木誠也は、はつらつと打ちまくった。横浜DeNAとの3連戦では、4月28日が4打数2安打、29日が4打数2安打3打点、30日も5打数3安打3打点と大暴れ。第2戦には2本塁打、3戦目も豪快な一発を叩き込んでいる。この時点で打率もセ・リーグ6位の3割1分8厘をマークしている。

 開幕から首位を走る広島に新たな4番が誕生しようとしている。鈴木誠也が押しも押されもしない4番打者として活躍を続ける時、「神ってる」は、「鈴木ってる」になり、広島の躍進を約束することになるだろう。

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