W杯出場決定で、彼のカードは本大会まで大丈夫だと思われていたが、その後チャージできる(信頼を回復する)機会を逃し続けた。去年12月の韓国戦(東アジア選手権)などは絶好の機会だったが、1対4の惨敗で残金は目減りする一方だった。そして今回のベルギー遠征での不調。もう何を言っても後の祭りだが、監督の評価と立場は、常に危ういものなのだ。

「マイアミの奇跡」起こした西野新監督は適任

 あまりにも卑近な例えになってしまったが、翻って私たちの仕事に置き換えても、これは同様のことがいえるだろう。日々続く仕事の中でも、出すべき結果はしっかりと残して、チャージできる時に信頼を勝ち取る。そうした意識を持つことの重要性を、今回の解任劇が訴えてくる。

 確かにハリルホジッチ氏に同情の余地は大いにある。何よりW杯まで2カ月となったこの時期の解任は、世界基準に照らしても非常識といえるだろう。また期待していた選手がケガや故障で大事な試合に出場できなかったことも何度もある。それでも情熱とプライドを持って、自身のサッカー(縦への速い攻撃やデュエル=球際の攻防での強さ)を日本代表に求め続けてきた。

 しかし、そうしたことを加味しても、それでもなお協会内に「解任やむなし」の声が高まってしまったのなら、それはハリルホジッチ監督の責任であり、西野朗・新監督(63歳)にすべてを委ねるタイミングといえるだろう。アトランタ五輪でブラジルを破った「マイアミの奇跡」で知られる西野監督。長らく指揮を執ったガンバ大阪でも、勝負師として結果を残し続けてきた。自身で公言する通り「攻撃的なサッカー」を好む指導者だが、チームの「和」や「コミュニケーション」を大事にする人だ。

 4月12日に行われた就任会見でも「最高の化学反応が起こるチームを目指す」と調和と信頼関係を強調した。選手個々の特徴を生かした柔軟なサッカーを展開することになるだろう。このタイミングで起用するには、最適な監督だと思う。彼がいたから、協会も今回の決断ができたはずだ。コーチ陣も全員日本人で固め、オールジャパン体制でW杯に挑むことになる。

 監督の去就は、すべて監督のせいだ。泣いても笑っても、その日は突然来る。なかでもサッカーは、極めてドライに事が進む。今シーズンのJリーグ、浦和レッズの堀孝史監督も開幕5試合(2分け3敗)で解任されている。おそらくそれがサッカーというものなのだろう。

 監督交代という危機感と緊張感を戦力化するーー。

 W杯の初戦は、6月19日、コロンビア戦だ。劇薬を使った日本代表の活性化に期待するしかない。