「ゆったりと構えて相手を見る」

 バインコーチには「思い切り打とうとしなくていい」と言われ続けているそうだが、優勝戦を振り返って彼女は「強く打つのではなく、ゆったりと構えて相手を見ることができた」と語っている。

 大坂選手の変身と安定感の秘密は、このコメントからも伺い知ることができるだろう。

 「強く打つのではなく、ゆったりと構えて相手を見る…」

 つまり、力で圧倒するのではなく、相手が届かないボールを的確に打つということ。そうすれば勝てる確率が上がるのは、当たり前の理屈だ。

 どんなことにも、奥義はある。スポーツはもちろん、仕事でも勉強でも、合理的なコツやツボのようなものがあって、そのポイントに気が付いた時、若い人は大躍進を遂げる。

 大切なことは、そのコツがどこにあるのかを求めようとする姿勢だ。その意味で、負けることにも、失敗することにも、前進のためのヒントがある。彼女も初優勝まで、もがき続けたことだろう。それもまた、変身に必要な時間と経験だ。

 大坂選手がくれたヒントは、「強く打つのではなく、ゆったりと構えて相手を見る…」ということだ。このスタイルは、どんなことにも通用する。

 バイン氏は、「彼女にはまだまだ伸びしろがある。すごいことだ」と大坂選手のピークがもっと先にあることを指摘している。

 彼女が優勝した「BNPバリパオープン」は、グランドスラム(4大大会)に次ぐ高レベルの大会で、このクラスの大会は年間4大会しかない。それだけに優勝賞金も134万860ドル(約1億4213万円)とグランドスラム並みに高額だ。

 準々決勝では世界ランキング6位のカロリナ・プリスコバ(チェコ)を破り、準決勝では世界ランキング1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)も倒している。今回の優勝で世界ランキングも44位から22位まで一気に上がった。しかし、この順位も単なる通過点だろう。

 身長180センチと身体も世界スケールだ。話すべき内容が思い出せなくてグダグダになったスピーチも、その直後からSNSで「かわいい」「天然でキュート」「愛らしい」と世界中のテニスファンから喝采を浴びている。

 6月決勝の全仏か、7月決勝のウィンブルドンか、9月決勝の全米か?
日本人初のグランドスラム制覇は、もう間近な気がする。

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