世界女王セリーナを育てたコーチに師事

 彼女のプレーを初めて生で観戦したのは、2016年1月の全豪オープン(メルボルン)だった。連日の猛暑の中、若さとスタミナを誇る大坂選手は3回戦まで勝ち上がり、豪快なサービスとパワフルなフォアハンドで攻める、力で圧倒するようなテニスをしていた。ただ、ゲームの中でも好不調の波が大きく、自分のショットが思うように決まらないといら立ちを見せ、大きな声で叫んだりしていた。

 ところが今回は無理をしない。ストロークの打ち合いをじっと忍んで、チャンスボールが来ると「ここだ!」とばかりにエースを決める。ゲームを観ていて感じたのは、ボールのコントロール同様に彼女のメンタルが見事にコントロールされていることだった。

 豪快さとパワーで押し切るのではなく、状況を把握しながら勝てるポイントで的確なプレーを繰り出していく。その冷静さが、相手をじわじわと苦しめていた。

 変身の理由はどこにあるのか? 多くのメディアが、去年12月から指導を受けているドイツ人コーチのサーシャ・バイン氏とアメリカ人トレーニングコーチのアブドゥル・シラー氏との出会いにあると説明している。

 サーシャ氏は、世界女王セリーナ・ウィリアムズ選手の練習パートナーを務めていたことがあり、ツアー72勝、4大大会(全豪、全仏、ウィンブルドン、全米)23勝のセリーナのプレースタイルを大坂選手に注入したと言われている。

 またシラー氏とのトレーニングで、体重も7キロ減量したそうだ。確かに今回の大坂選手のプレーぶりは、全盛期のセリーナを見るように迫力と軽快さと落ち着きを併せ持っていた。

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