WBCで評価が一変したキャッチャー小林

 それは、キャッチャーとしてスタメン出場を続けている小林誠司(巨人)である。大会前の評価は酷いものだった。本来マスクをかぶるのは嶋基宏(楽天)だったのかもしれない。それが足の故障で大会前にチームを離脱した。急きょ、炭谷銀仁朗(西武)が追加招集されたが、小林、大野奨太(日本ハム)、炭谷の捕手陣は、誰が出場しても最も心配なポジションと言われていた。

 新聞報道では「結局最後まで穴は埋まらなかった」と捕手陣を総括したところもある。経験不足、打撃力不足…。確かに捕手への懸念は、的を射ていた。

しかし、こうした評価をそのプレーで覆し、心配の声を封じたのが小林の活躍だった。オランダ戦までの打撃成績は11打数5安打4打点と文句のつけようのない成績を残しているが、小林で語るべきは守備での落ち着きと相手打者の心理を読んだ配球の妙にある。

 ここまで日本が自分たちの持ち味を発揮して落ち着いて戦えているのは、守備における扇の要、キャッチャーの小林が冴えわたった思考で生き生きとプレーできていることが最大の要因と言える。中でもタイブレーク(延長11回以降は、0アウトランナー1塁2塁で攻撃を開始する)まで持ち込まれ激闘となったオランダ戦は、小林の守備が日本を勝利に導いたと言ってもいいだろう。

 ポイントは5回裏の守りだ。5回表に小林のセンター前ヒットで勝ち越した日本は、6対5とオランダを1点リードした。しかし、すぐさま0アウト2塁3塁のピンチを迎え、打席は3番のボガーツ(レッドソックス)だった。その後には4番バレンティン(ヤクルト)、5番グレゴリウス(ヤンキース)が控えている。1ヒットで逆転を食らう絶体絶命のピンチである。

 マウンドには時速150キロを超えるストレートと落差の大きさから「お化け」と呼ばれるフォークボールを投げる千賀がいた。