“W杯代表落ち”に対する意地ではない

 60歳まで現役続行。カズにとっては決して荒唐無稽な話でもないかもしれない。しかし、カズの存在を最年長出場記録だけで見ているのは、彼の持っている魅力を半分しか見ていないような気がする。本当の意味でカズが放っているメッセージは、「大きな挫折を乗り越えてそれでもサッカーを続ける」その真摯な生き方にこそあるのだと思う。

 挫折とは、言うまでもない。1998年フランスW杯日本代表メンバーからの落選である。その決断を下したのは当時の岡田武史監督(日本サッカー協会副会長、FC今治オーナー)だが、本大会を前にヨーロッパから帰国して記者会見に臨んだ時から、今の今まで、この落選に対する疑問も岡田氏に対する不満も彼の口から一度も聞いたことがない。

 当時、社会現象にもなった「メンバー落ち」が、カズのモチベーションになっているのでないか…という意見もあるが、意地や反骨心だけで50歳までプレーを続けることはできないだろう。むしろ彼の内面はもっとピュアで、とにかくサッカーが好きなのだと思う。

 挫折があろうが、思わぬ状況に置かれようが、不運な出来事に見舞われようが、彼は文句も言わず、それを態度で表すようなこともなく、とにかくサッカーと純粋に向き合ってきた。カズが50歳まで現役でプレーできるのは、そうした考え方やサッカーに対する姿勢へのご褒美のように思えてならない。

 私たちにとっても同様の事態が必ずあるはずだ。何かの選考から漏れたり、思わぬ人事で不本意な思いをしたり、プライドを傷つけられるような目に遭ったり…。