「汚いパーを恥じよ。誇り高きダブルボギーに乾杯」

 ゴルフコラムの巨匠、夏坂健氏の作品に『下劣なパー、誇り高きダブルボギー』という秀作がある。

 1930年の第47回オックスフォード大学対ケンブリッジ大学のゴルフ部定期戦でのこと。連日の豪雨で試合コースは水浸し。困ったことにバンカーに水が溜まって池と化している。そこで両大学のキャプテンが話し合って、バンカー(水中)に入ったボールは、ピックアップして無罰で後方にドロップできるルールを採用した。

 次々とスタートしていく選手たち。第4組で対戦したのはケンブリッジ大学の主将エリック・ブレイン選手とオックスフォード大学のヘンリー・ロングハースト選手だった。迎えた2番ホール、ロングハースト選手は1打目をバンカーに打ち込んでしまう。彼は、このボールをその日のルール通りにピックアップして後方にドロップした。そして次のショットでグリーンを捉えると2パットで上がりながら、そのスコアを「6」と申告したのだ。

 その時、彼はこう言ったと紹介されている。

 「(前略)ゴルフにはアウト・オブ・バーンズ(OB)という鉄則がある。(中略)次打が打てない場所に打ち込んだらOB、元に戻って打ち直すべきだ。しかし、全選手がスタートした今になって変更するのは至難。そこで私は最も重い2打罰を課してプレーするよ」

 コラムは、次のように結ばれている。

 「汚いパーを恥じよ。誇り高きダブルボギーに乾杯、そして拍手だ!」

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