名選手は緊迫した場面でワクワク、リラックス

 

 ただ、彼の真骨頂はもちろん、いかなる場面でも視野の広い落ち着いたプレーを繰り出せることだ。この日も試合終盤にはサイドラインぎりぎりのパスをどんどん決めて前進を続けた。またフィールド中央のホワイトには力を抜いた優しいボールを投げて、彼のラッシュを演出する。ブレイディーの決断の速さと正確なプレーが、劣勢のチームを見事によみがえらせた。

 「ジョー・クール」と呼ばれ、冷静沈着なプレーでチームを何度も大逆転に導いた前述のジョー・モンタナにインタビューしたことがある。試合最終盤にビッグプレーを決めてドラマをつくるモンタナのプレーは「モンタナ・マジック」とも言われていた。その彼に「どんな状態で緊迫した場面を戦っているのか」と聞いた。するとモンタナは、不思議そうにこう答えた。

 「緊張するかって? そんなことはないよ。なぜならその場面を戦うために練習してきたのだから。やっとこの時が来たという感じで、ワクワクしながらプレーしている」

 モンタナの記録を抜いたブレイディーなら、当然同じようなメンタリティーで戦っていることだろう。少なくともあの力の抜けた正確なパスは、緊張や力みをまったく感じさせなかった。ブレイディーがワクワクしていたかどうかは分からないが、モンタナとの共通点は、大事な場面でいかにリラックスして広い視野を持てるかどうかということだろう。

 インフルエンザの中でスーパーボウルを見られたのは単なる偶然だが、追い込まれた状態の中でも、置かれた状況を冷静に把握し、広い視野を持って打つべき手を的確に判断できることが、頼りになる人の条件と言えるだろう。