威力に欠けるサーブをリターンされた錦織

 しかし、錦織本人が「惜しかった」というほど、その内容はほとんど互角であり、勝つチャンスは十分にあった試合だと思った。

 何が試合を分けたのか?

 一つにはやはりサーブの破壊力の違いがあげられるだろう。攻撃的に攻めてくるフェデラーは、錦織のファーストサーブを強打してリターンエースを何度も奪う。世界のトップ選手で、ファーストサーブを簡単に狙われる選手はほとんどいないだろう。それだけ錦織のサーブに威力がないからだ。

 だからコースを読まれたり、甘くなったりするとチャンスボールとばかりに返してくる。これで得点を奪われる展開は、ストロークで勝負したい錦織にとっては厳しい。その差がこの試合では、明らかにフェデラーのアドバンテージになっていた。

 しかし、そうしたハンデを克服して堂々の世界5位でプレーしている錦織だから、そうしたことも織り込み済みでフェデラーに挑んでいったことだろう。

大御所フェデラーに対し、受けに回ったのが敗因

 私が気になったもう一つの理由は、今大会の錦織が攻撃的というよりは比較的相手のテニスを受けて戦っているように映った点だ。初戦のアンドレイ・クズネツォフ(ロシア)戦もいきなり第1セットを取られて嫌なスタートだった。結局フルセット3時間半を超えるゲームを戦って勝ったが、もっと楽に勝ちたい相手だった。暑さの中で、次の試合に備えて体力を温存するためである。

 フェデラーとの試合も、私の見る限りフェデラーの方が攻撃的に攻めている気がした。一方の錦織は、慎重に丁寧に戦っていた。

 何が錦織を慎重にさせたのか?

 それは「暑さ」と「相手の存在の大きさ」だったように感じた。暑さの中でスタミナを維持しなければならない。体力を温存するペース配分が求められる。しかし、受けに回ればその分走らされて体力とフレッシュな思考を奪われていく。また、格上の相手と戦うときには、ある程度無茶を承知でギャンブルを仕掛けないとチャンスが生まれない。

 ジョコビッチやマレーがやられたのも、ランキングに劣る相手が暑さの中でより攻撃的になって襲ってきたのを、受けてしまったからだろう。そのときには両者に平等である暑さも相手の戦力に加担することになる。

次ページ 番狂わせは下位プレーヤーの開き直りから