挑戦者の気概と王者のプライド。東京体育館で行われた卓球の日本選手権、最終日(1月21日)、男女のシングルス決勝はまさにそんな気持ちの激突だった。

卓球の日本選手権、男子では14歳の張本智和選手が10回目の優勝を目指す王者・水谷隼選手を4対2で下して優勝した。(1月21日、写真=田村翔/アフロスポーツ)

 何かが変わる。いや、まだ何も変わらない。
落ち着かない予感が試合前から漂っていた。

 まず先に行われたのは女子の決勝だった。前回覇者の平野美宇選手(エリートアカデミー)に伊藤美誠選手(スターツ)が挑んだ。ジュニア時代から覇権を争ってきた17歳同士の対戦だった。今大会の伊藤は絶好調だった。準決勝では5回目の優勝を狙う石川佳純選手(全農)を4対1であっさりと退ける。攻撃的な卓球が第一人者の石川を終始防戦に追い込んだ。

 そんな伊藤を相手に平野の苦戦は必至だと思った。伊藤の好調はもちろんだが、平野は準決勝から頭をかしげながらプレーしていた。ベテランの永尾尭子選手(アスモ)に4対3で何とか勝ったが、表情はさえなかった。何かを探しながらプレーしていたが、それが見つからずに、あるいはつかめずにもがいていた。

 だからこのままでは伊藤にやられる。そう思ってこの決勝を見ていた。

 結局、平野はそれを取り戻せなかった。伊藤が次々に繰り出す一瞬速いストローク(ライジング)に翻弄され、まったく持ち味が出せなかった。伊藤の「美誠(みま)パンチ」と呼ばれるバックスイングのない超高速の反応(返球)が面白いように決まった。

 平野も意地で何とか1セットを取ったが、この試合は伊藤のものだった。4対1で伊藤が初のチャンピオンに輝いた。

 「優勝を目指してやってきたんですが、一試合、一試合、集中してやるということを心掛けて戦いました」

 「(自分のプレーを)思い切ってできたことが一番良かったのかな…と思いますし、とてもうれしいです」

 とにかく思い切って攻める!
インタビューで語った伊藤の言葉が、挑戦者の姿勢であり、突破力の本質だと思った。平野が探し続けていたのは王者の戦い方であり、勝っていた時の記憶だと感じた。それゆえに相手との戦いが自分との戦いになってしまう。私にはそんなふうに映った。