選手たちを縛らず、自立させ、対話する

 また原監督自身が、講演やテレビ出演で外の世界に出ていくように、選手たちを縛ることなく自由な発想で活動させていることも、青学の強さにつながっているのだろう。

 選手たちの自治を重んじ、彼らの主体性の中でチームを運営する。

 強い組織の条件は、自立した個人を確立することだろう。そうでなければ、いつまでたっても指導者の技量や知識を超えていくことはできない。そして何より、レースで走るのは自分自身なのだから。

 とはいえ、練習後の夕食は全員一緒で食べることを求めている。それは、独立した個人をつなぐ、一体感を生む時間なのだ。

 かつて日本のスポーツ指導者は、選手を平気で殴ったり叩いたりしてきた。また連帯感や人間教育の名のもとに個人の自由を奪い、監督の指導に従うだけの選手を作り続けてきた。その手法をすべて否定することはできないが、野蛮な時代が続いた。それがその時代の社会を反映していたのだろう。

 しかし、選手を「モノ」に例えるわけではないが、それが大事な商品だと思えば、殴ったり叩いたりすることの愚に気がつけるはずだ。また、その価値を広く世の中に知ってもらおうとすれば、講演活動やテレビ出演も有効な手段となるだろう。

 原監督のマネジメントを「ビジネス感覚」というのは、そうした時代に合ったやり方という意味だ。また、選手を観察するのは、練習中はもちろん、練習の前の時間や練習後の様子が大事だという。そこに選手の本来の姿があったり、抱えている問題が見えたりするからだそうだ。どこまでも選手個人の把握と対話を大事にしているのだ。

 目指すべきは、指導者がいなくても機能する組織。その知恵と対話力が新たな指導者の資質となれば、今までとは真逆の発想である。

 指導法やマネジメントに正解やマニュアルはないだろうが、青学の選手たちのたくましい走りと笑顔には、時代の先頭を走る自信が感じられる。