大学陸上部は“部活”でなく“ビジネス”

 以前、何かを検索したことで、自動的に彼の講演を勧めてくるのだろうが、未だかつて現役のスポーツ指導者で、こんな存在がいただろうか。それもプロ野球やサッカーJリーグのプロの監督ではなく、学生を束ねる大学陸上部の監督である。

 講演の内容も気になるところだが、陸上競技部の監督でありながら講演活動にも精を出す。その「姿勢」にこそ、注目を集めるマネジメントの本質がある。

 それをひと言でいえば「ビジネス感覚」といえるだろう。

 講演活動も文字通りビジネスだが、拝金主義や金儲けの意味ではない。大切に作った商品をできるだけ高く買ってもらいたい。また人気のある商品を作り続けたい。そのために必要な要素は、「人」「モノ」「金」「情報」だと原監督は言う。

 売り手は、買い手の立場になって考える。何をどう勧めたら喜んでもらえるのか。お互いが「WIN」「WIN」になるにはどうしたらよいのか。ビジネスでは当たり前の発想だ。「人」「モノ」「金」「情報」を駆使して最善の結果を出す。

 選手を育て、強いチームをつくるプロセスも、これとまったく同じだと言う。それは、青学の監督に就任する前に経験したサラリーマン時代の手法であり、ビジネス的感覚だと原監督は公言する。

 具体的には選手の声に耳を傾け、それぞれの個性を活かすことだという。

 また、「青トレ」と呼ばれる独自のトレーニング方法は、「人」と「情報」によってもたらされた新しい価値と言えるだろう。走るために必要な筋肉と動きを鍛える。的外れな練習はやらない。この価値が「勝ち」を生む身体と走法を作り出していく。選手たちは、自分たちのトレーニング方法を信頼し、その気持ちが走る自信につながっていく。

 これをやれば負けるはずがない…と。