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錦織圭が優勝、好敵手の攻略は言語習得から

 もう一度、言おう。

 「国際的な競技力とは、英語力そのものだ」

 なぜなら、もはやグローバルな感覚を持ち合わせていなければ、世界と伍して戦えない時代になっているからだ。

 そのスポーツの実力者であることは大前提だが、それだけでは世界で勝てない。ライバルを知り、彼らの思考法や価値観、文化を知らなければ攻略できないからだ。それがグローバル化の真に意味するところだ。

 男子プロテニスの錦織圭選手(29歳)が、全豪オープンの前哨戦「ブリスベン国際」で優勝して苦もなく英語でスピーチしている姿がすべてを語っているだろう。
 身長178センチ(テニスの世界では決して大きくない)の錦織が世界の強豪と渡り合えているのは、英語で話すのが当たり前、そのレベルをスタンダードだと思っているからだ。つまり最初から自分の中の競技設定が、世界基準になっているのだ。

 男子マラソンの大迫傑選手(27歳、ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が、設楽悠太選手(27歳、HONDA)が打ち立てた日本記録をあっさりと更新(2時間5分50秒)したのと、彼が米国のプロクラブに所属して世界を相手に戦っていることと無縁ではないだろう。英語圏にいることで発想や考え方が変わったのだ。彼はまだまだ自分のタイムが伸びることを疑っていない。世界基準に照らして自分自身を分析し、必要な練習内容をこなしているのだ。

 サッカーのイングランド・プレミアリーグ、サウサンプトンFCで活躍する日本代表・吉田麻也選手(30歳)が、正月のテレビ番組で言っていた。

 「海外(英国以外)からくる選手を何人も見ているが、成功する選手はみんな地元(英国)に慣れようとする選手ばかり。それができないと選手としては活躍できない」

 吉田も流暢な英語を話し、完全に現地に溶け込んでいる。会見やインタビューももちろん通訳なしでこなしている。自身の成功もそこに由来しているというのだ。海外に戦いの場を求めて行く以上、その地の言葉で話したり、英語を習得するのは、フィジカルな練習やトレーニングをこなすのと同じレベルで大切なことなのだ。

 大リーグに挑む菊池雄星は、3年前から英語の家庭教師をつけて週1回のペースで英語の勉強を続けてきたという。以来、時間があれば自分自身で英語の勉強に取り組んでいた。1年前に大リーグ挑戦を公言してからは、より一層英語の勉強に力が入ったと語っている。これが世界を目指すアスリートにとって、あるべき姿だろう。

Q 米国に慣れるためには?
 と聞かれた菊池は、こう答えている。

 I don’t know the detail yet, but I want to practice hard and adjust myself and I want to enjoy every single thing.
 (細かいことはまだ分からないが、一生懸命練習して、自分を適応させて、すべてのことを楽しみたい)

 この姿勢が「journey」なのだと思う。

 スポーツにおけるグローバル化とは、単に国際感覚を磨くことではない。もちろんそれも大事なことだが、その本質は、戦う相手を知ることにある。そして、そうした思考や経験がアスリートとしての自信を深めることになっていく。
 だからこそ語学が必要になるのだ。

 これからは菊池雄星のアプローチが、スポーツ界のスタンダードになることだろう。(=敬称略)