大谷のメジャー入団会見で感じた不安

 その観点で言えば、大谷の「二刀流」ほど優美なプレースタイルはない。しかもエンターテイメントという点でも魅力的なパフォーマンスだ。

 パイオニアの野茂英雄投手がロサンゼルス・ドジャーズで人気者になったのは、抜群の成績はもちろんだが、「トルネード」と呼ばれた独特の投法が多くのファンを楽しませたことも大きな要素だ。エンターテイメントを好む西海岸にはもってこいのパフォーマンスだった。

 大谷が選んだロサンゼルス(西海岸)は、彼にとっては最良の地であり、エンゼルスは最適なチームと言えるだろう。あとは、投打で活躍するだけ。考えるべきは野球に専念することだけだ…と言いたいところだが、年末に野球好き5人が集まった会食でこんな話が出た。

 一人が大谷のエンゼルスでの入団会見を見て「がっかりした」と言ったのだ。英語でスピーチしたのは、自身の名前だけ(ニュースではそこしか報じられていなかった)。5年前のプロ野球入団の時から「メジャー挑戦」を表明していたのだから、ここで流ちょうな英語を披露してほしかったというのが彼の不満だった。それだけの(英語を修得する)時間は十分にあっただろう…と。

 私もその時には「なるほど」と思った。しかし、その会食から数日後、大谷は札幌ドームで1万3000人のファンに向かって流暢な英語で挨拶した。

 Long time no see.
 I’m Shohei Ohtani.
 Thank you for coming out to see my press conference.
 Please enjoy.

 どうやら私たちの心配と不満は杞憂(きゆう)に終わったようだ。大谷の英語のスピーチを球団の通訳が日本語に訳して会場は大いに盛り上がったそうだ。大谷選手の英語力がどの程度なのかは詳しく知らない。しかし、こうした場で英語を使うこと自体に彼の覚悟と準備がうかがえる気がした。